選挙を終え、官僚とマスコミが“逆戻り”するかもしれない相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2012年12月20日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先の総選挙では事前予想通り、いや予想以上に自民党が大勝した。民主政権のドタバタが完全に嫌気された結果に他ならない。選挙結果の分析や詳報は他稿に譲るとして、私なりに今般の選挙結果で浮かび上がる懸念に触れる。キーワードは「逆戻り」。官僚とマスコミがまたぞろ古い時代に戻るのではないか。

政治主導の本質

民主党政権が誕生したとき、キャリア官僚からは不満の声が相次いでいた(写真と本文は関係ありません)

 「これが彼らの“政治主導”の本質なんです」――。

 2009年に民主党政権が誕生した直後、ある中央官庁のキャリア官僚が私にこんな言葉を漏らした。彼の手元には所属する官庁の職員配置を記した一覧表があった。所々に赤ペンでバツ印が入れてある。

 愚痴の根源は、こういう構図だ。

 官僚支配を打破すべく、政治主導を訴えて誕生した民主党政権。新たに送り込まれた民主党の大臣たちは、官僚の箸の上げ下げまで指示を出し、あげく職員の座席表にもクレームを入れたというのだ。

 「生活指導担当の教員が問題児を監視するような姿勢だ」――。

 こう吐露する官僚の言葉に私はあきれた。政治家が官僚を使いこなし、新しい政策を通していくのが政治主導の根本だと思っていた私は、がくぜんとしたことを鮮明に記憶している。同時に、民主党が“政治主導”というスローガンを完全にはき違えているとも感じた。

 その後、民主党政権が打ち出す各種施策が遅々として進まず、かつチグハグさが目立ったこの背後には、こうした政治家と官僚の対立という根深い事情が潜んでいた。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.