コラム
» 2012年12月18日 08時28分 UPDATE

窪田順生の時事日想:再び始まるマスコミの“安倍晋三バッシング”、なぜ? (2/3)

[窪田順生,Business Media 誠]

ニュースは偏っている

 その苦心の作品をつくりあげた局員は、周囲にこんなことを言ったという。

 「オレが安倍を辞任させてやる」――。

 元アナウンサーから一緒に話を聞いていた人たちは、報道機関の人間がそんな非常識なことをするわけがないだろうと半信半疑だったが、私からするとごく普通の「マスコミ業界あるある」だ。マスコミの友人たちと飲むと、必ずこういう人がいる。なにか特別な思想をもっているわけではないが、「安倍晋三」という響きを耳にした途端、「あんなのが総理になったら日本は終わりだ」と鼻息が荒くなる。で、だいたいその理由を聞くと「右翼だ」とか「政権を投げ出した」とか確たる論拠がなかったりすることが多い。この感覚は、『ドラえもん』に出てくるジャイアンが「むしゃくしゃしたから殴らせろ」とのび太のところにやってくるのとよく似ている。だから、ジャイアンが根っからのいじめっ子ではないのと同じで、アンチ安倍の方たちも悪い人ではない。

 学生時代、ほんのちょびっとだけテレビの報道フロアで働いたことがある。キャスターにカンペで秒だしをするのと、バミリ(ガムテープなとで立ち位置などの目印を床につけること)ぐらいしかできず、先輩フロアディレクターにケツを蹴り上げられていた思い出しかないが、ひとつだけ有意義な経験させてもらった。

 それは、インカム(ヘッドフォンとマイクがひとつになっている機器)から聞こえてくるサブ(副調整室)の報道マンたちのおしゃべりだ。モニターに現れる政治家やらに厳しいダメ出しやら、あの顔は下品だな、なんてこぼしており、その辛口批評家ぶりはすさまじく、まるでこの世にはロクな政治家がひとりもいないのではないかと錯覚してしまうほどだった。

 部活とバイトしかしていなかったバカ大学生にとって、これはいい社会勉強になった。それまで報道なんておカタい響きの仕事をしている人たちは「中立公平」という言葉を部屋に貼っているお坊さんみたいな人たちだと信じていたので、すごく親近感がわいた。と、同時に相田みつをの『にんげんだもの』ではないが、人間がつくっているものである以上、ニュースも必ず偏っているものなんだなあ、ということをぼんやりと学ばせていただいた。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ