ネットでできる選挙の話、ネットでできない選挙活動どうなるネット選挙!? 津田大介が聞く(2/3 ページ)

» 2012年12月14日 14時20分 公開
[津田大介,津田大介メールマガジン「メディアの現場」]

当選しても「選挙違反で逮捕」!?

津田: 選挙が終わってしばらくすると、落選した議員の関係者や本人が選挙違反で逮捕されるなんていうニュースが流れてきますが、有権者がそうした選挙違反で逮捕されたり、書類送検されたりするケースはあるのですか?

三浦: 選挙ポスターに落書きをしたり、はがしたり、演説を妨害したりといったことで逮捕されることはありますが、そういう突発的な行為以外はほとんどありません。選挙運動に熱心に関わる人は、遅かれ早かれ候補者の陣営や政党関係者に接触しますから、各陣営や政党から「これをやってはいけませんよ」とか「これは大丈夫ですよ」とレクチャーを受けることが多いんです。選挙前、あるいは選挙期間中にやってもいいこととやってはいけないことをトレーニングしてもらっているので、一般の人が選挙運動に関わる中で選挙違反をして逮捕されることはほとんどないですね。

津田: 個人的には選挙違反って大体落ちた人が逮捕されてて、当選した議員は「こんな選挙運動していいの?」みたいなことをしても議員になってるから逮捕されることはないというイメージがあるのですが……。

三浦: 昔は落選議員に集中していたかもしれませんが、最近は選挙結果で区別されることはありません。ただ、違反の取り締まりは地域によってかなり温度差があります。

津田: なぜ地域によってそのような温度差が生じるんでしょう。そもそも選挙違反に当たるかどうかは誰が決めているんですか?

三浦: 良くないたとえかもしれませんが、高速道路の時速80キロ制限ってありますよね。ほかの車が時速100キロで走行する中、時速85キロで走っていても捕まることはまずないですよね。でも、110キロだったら捕まる可能性が非常に高い。地域の状況によって、選挙管理委員会や警察がそれぞれ判断しているわけです。同じ公職選挙法による摘発であっても、地域によってばらつきがあることは確かです。

未成年者の選挙運動はNG

津田: 選挙違反にはいろいろなケースがあると思うのですが、一般にはあまり知られていないけれど「こんなケースはNG」というような例ってほかに何かありますか?

三浦: 未成年者の選挙運動でしょう。最近は、これまでのウグイス嬢以外に、若い男性を使った街宣活動も増えています。主に女性層をターゲットにしたもので、私は「カラスボーイ」と呼んでいるのですが、ウグイス嬢にしてもカラスボーイにしても若い人が多い。成人の大学生がたまたま自分が当番の日に熱を出し、責任感から自分の代わりに大学の後輩を寄こすということがあったとします。その人がたまたま19歳だった場合、公職選挙法は「未成年者に選挙運動をさせてはならない」と定めていますので、選挙違反に該当します。(注4)ただ、ポスターやシールを貼るというような「労務」であれば年齢は関係ありません。

注4:公職選挙法第137条の2で未成年者の選挙運動禁止が定められている。

津田: ポスターやシールを貼るというのは「選挙運動」に当たらないんですね。「選挙運動」ではなく「労務」であれば未成年者でもよい、と。

三浦: はい。選挙運動というのは「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為」と定義され(注5)、各地域の選管もそれに従っています(注6)。それ以外の労務であれば年齢は関係ありませんし、選管が定める範囲で報酬を支給することもできます。しかし選挙運動においてお金を払う場合は、選管に登録した選挙運動員に限りますし、なおかつ20歳以上でなければなりません。このあたりでうっかりしてしまう陣営もある。大学生なら大丈夫だと思っていたら、18、19歳だったということもあり得ます。実際、それで逮捕されたケースもあるんですよ。

注5:公職選挙法における「選挙運動」とは、法律の中に定義規定はないが「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為」とされている。このあたりは、選挙制度研究会による書籍『実務と研修のためのわかりやすい公職選挙法』(ぎょうせい)に詳しい。

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