購買部門に見るカルビーの成功、シャープの苦悩(1/2 ページ)

» 2012年12月14日 08時00分 公開
[野町直弘,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:野町直弘

アジルアソシエイツ社長。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手自動車メーカーに就職。同社および外資系金融業にて調達・購買実務および、調達部門の立ち上げを経験。コンサルティング会社にて調達・購買、ロジスティック、BPR、SCMなどのプロジェクトを担当。ベンチャー系WebインテグレーターでCOOおよびB2Bチームの立ち上げを行う。その後独立しアジルアソシエイツを設立。


 シャープと鴻海の資本業務提携での合意が今年3月に行われました。しかし、以降シャープの業績見通しでの大幅な下方修正やそれによる株価の急落により、鴻海によるシャープ本体への出資交渉は凍結状態になっています。

 「シャープも含め日本の家電メーカーは昭和30年代からの成功体験で保守的になったところがある。鴻海の仕事のスピード感とか、ものの考え方とかをシャープに植え付けたいと思った」「ずいぶん悩んだが、この提携は日本のデジタル家電メーカーが窮地を脱する一つの解決策だと信じている」

 これはシャープの町田相談役が日経新聞のインタビューに答えた内容です。

 かつて日産自動車は1990年代後半の経営危機から1999年にルノーと資本提携をして、カルロス・ゴーン氏のもと、見事に経営再建を果たしました。日本企業を支える現場の力とドラスチックかつスピーディな意思決定が上手く融合した成果でした。調達・購買改革についても、ゴーンさんの著書の中に「購買部門をより重視し権限を持たせることでコスト削減につなげた」という記述があります。

 私はシャープと鴻海の提携についてもポジティブにとらえるべきだと考えていますし、結果的にシャープがこの提携を機に経営再建するであろうと考えていました。またそのためには鴻海やその主要取引先である米アップル社流の購買・調達手法を取り入れることであろうとも考えていました。

 しかし、現状はそのようにはなっていません。むしろ資本業務提携すら暗礁に乗り上げている状況です。まさに「シャープの苦悩」が窺えます。

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