路面電車はシャッター街を救えるのか杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2012年12月14日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

2つの延伸案から「左折案」を選択

 そこで福井市は、福井駅前の区画整理、再開発事業として、福井鉄道をJR福井駅前広場に引き込む計画を提案した。これが実現すると、JRと福井鉄道の乗り換えが便利になる。福井鉄道沿線からJR福井駅を利用する人々には朗報だし、旅行者にとっても便利だ。もちろん福井市は将来の北陸新幹線の延伸開業を見越して計画を建てている。通勤や買い物で福井駅前を訪れる人々も、新幹線で遠くへ行こうとなれば長時間の駐車を避けて電車に乗る。

 福井市のボランティア団体「公共交通利用促進研究会」が、2012年9月に福井駅西口で実施した県民210人へのアンケートによると、福井鉄道のJR駅への延伸には63%が賛成。現状維持が27%だった。また、一時期福井市で検討された、福井鉄道そのものを中央大通りに移設する案は6%が関心を示したという。

 福井市の延伸案は当初「左折案」のみだった。これは福井鉄道を延伸し、福井駅前広場で左折する。JR福井駅と新電停の間に路線バスのりばを挟む形になる。JRと福井鉄道の乗り換えだけではなく、福井鉄道とバス路線との乗り換えも便利にして、福井駅を交通の中心にしようという意図がはっきり現れている。

 ただし、この案ではJR福井駅と福井鉄道を直結するという意味は薄れる。そこで、今年9月に新たな「直進案」が示された。福井鉄道をJR福井駅までまっすぐ延伸する。この案は電停と駅が近づき、バスのりばとも並ぶ。乗り換え利用客に便利な形となっている。

左折案(出典:福井市Webサイト)
直進案(出典:福井市Webサイト)

 私のような旅行者にとっては直進案のほうがありがたい。直進案に合わせて、JR駅舎から電停までのひさしがあるとなお良い。乗り換えの利便性を考えれば、雨や雪にさらされずに移動できたほうがいい。私が初めて福井駅を訪れたときは雪だった。足元の悪い中、駅前から歩き、さらに道路の真中の電停へ行かなくてはいけない。これでは電車より駅前発着のバスのほうが便利だと思った。

 しかし、これらの計画に反対する動きもある。福井駅西口の商店街関係者だ。

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