今回のイスラエルとハマスのサイバー空間の戦闘からは、死者が出るような被害は報告されていない。1つにはハマス側が原始的な戦いをしていることにある。ハマスはネットワークにつながった攻撃・防衛システムを持たないために、大量の犠牲者を出すようなサイバー攻撃を受ける心配がなかった。
一方、イスラエル側は、ハマス側のミサイルを「アイアンドーム」と呼ばれるミサイル防衛網で迎撃したように(迎撃の成功率は何と87%)、防御策がきちんと作動した。ハマスのために動いたアノニマスの攻撃による大きな被害は出なかったのだ。
もしもサイバー攻撃対策が脆弱(ぜいじゃく)であったらどうだったろうか。国家機能が麻痺、または死者が出る事態にもなりかねないだろう。こうした現実を日本政府はどのようにとらえるべきか。残念ながら、日本の動きはあまりにも鈍い。
最近話をした政府関係者は、「対策は後手後手に回っており、官公庁ですら攻撃の入り口は隙だらけだ」という。日本を標的にしたサイバー攻撃は以前から表沙汰になっていないだけで、私たちが考えている以上に頻発しているという。
その裏にはこんな事情がある。日本における情報セキュリティ対策の中核組織は内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)だ。しかし、ここにも官僚のくだらないプライドが見え隠れする。この政府関係者はいう。
「攻撃を受けた、被害が出たという情報を各省庁がNISCに上げないと対策は行えないのですが、省庁のホンネは『そんなことしたくない』なんですよね。『攻撃を受けました』と情報を上げれば、NISCからメディアに話が伝わり、被害にあった省庁が恥をかくことになるだけですから」
ただ、正直なところ、こうした「事情」が官公庁の隅々にしみ込んでいるといわれても意外に感じない。「だってそれが日本だから」と思ってしまうのは筆者だけではあるまい。私たちができるのは、ただ「本気のサイバー攻撃が来ませんように」と祈ることだけなのかもしれない。
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