サイバー戦争になれば確実に負ける日本伊吹太歩の世界の歩き方(4/5 ページ)

» 2012年12月13日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

「アラブの春」のような大衆のうねりを生み出せ

 アノニマスの攻撃方法は、世界的にサイバー攻撃の主流であるDoS攻撃(Denial of Service attack)とよばれるものだった。大量のデータを送り込むことで敵のサーバやネットワーク機器をパンクさせる。アノニマスによると、およそ1万もの民間を含むイスラエル系サイトが攻撃の標的になった。

 イスラエル政府は、今回ガザに対する軍事作戦を始めてから、政府系サイトなどに4400万回ものサイバー攻撃があったと公表している。ターゲットになったのは、首相官邸、大統領官邸、外務省などだ。さらにエルサレム銀行やニュースサイトなど民間にも被害が出た。

 イスラエル政府のサイトも、他の国々と同じように日常的にサイバー攻撃の対象になっている。だがここ最近の激しい攻撃はハマスとの戦闘が原因になっているのは明らかだった。「戦火」はイスラエルにとどまらず、イスラエルの同盟国である米国にも飛び火した。ユダヤ人は米政界に強い影響力を持っているが、その象徴的な存在であるアメリカ・イスラエル公共問題委員会のサイトが一時ダウンした。

 さらに現場での戦闘や民衆の蜂起にそなえ、アノニマスはパレスチナ人のために、イスラエル軍の監視を避けられるネットアクセス方法を伝えたり、やり取りのできるチャットルームを提供したり、接続先の情報提供を行ったりもした。IPアドレスを隠したり、ネット接続がダウンした場合に使う無線インターネット接続のセットアップ方法などを英語とアラビア語で伝えた。ネットを使って「アラブの春」のような大衆のうねりを生み出そうと協力も続けた。

 イスラエル軍や支持者らも反撃にでる。アノニマス関連のサイトが激しいサイバー攻撃にあっているとの報告もあった。イスラエル国防軍は、日ごろから組織として機能的にサイバー攻撃対策を行っている。それ故、世界中に散らばるハッカーからの攻撃を最小限に食い止められたともいえる。

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