サイバー戦争になれば確実に負ける日本伊吹太歩の世界の歩き方(3/5 ページ)

» 2012年12月13日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

サイバー空間上からプロパガンダは世界中に拡散した

 こうしたネット上の小競り合いを皮切りに、サイバー空間上でプロパガンダ合戦が活発になった。イスラエル寄りのツイートは、ガザに近いイスラエル南部の住民がいかに悲惨な目に遭っているかを喧伝するために、破壊された住宅の写真やビデオをアップ。それに対して、アンチ側はイスラエルが罪のない女性や子供を攻撃しているとネットで非難した。

 情報は世界中に拡散した。これは紛争地においては非常に重要な戦術だ。何故ならば国内のみならず世界での「支持・不支持」はその後の国際社会の動きに影響を与えることが少なくない。特に紛争の絡む国では、平時からPR専門家を雇って国際社会にメッセージを伝えるのが現実で、戦争に勝つためには重要な要素の1つとなる。

 また、イスラエルにとって、情報機関「モサド」の存在など、情報戦や裏の作戦はお手のもの。平時からイスラエル側のオペレーションセンターには、世界中に2万5000人ほどいるイスラエル シンパからビデオや写真、目撃者の報告書などが送られてくる。これらを基にさまざまな言語でソーシャルメディア上に情報を発信してきた経験は、今回の戦闘でも生かされた。

 ちなみにイスラエル軍のサイバー対策チームは、イスラエル支持者を増やすためにTwitter、Facebook、Instagram、さらにはPinterestまでを駆使してPR活動を展開する。今回の戦闘でも、戦場にはいない新聞やテレビなどのメディアを中抜きにして、世界中のイスラエル支持者たちにリアルタイムで現場の情報を伝えていた。

 だが今回、イスラエルにとって予想外の敵が現れた。世界中でサイバー攻撃を仕掛けているハッカー集団「アノニマス」だ。きっかけはジャアバリの殺害だった。この暗殺事件にアノニマスは敏感に反応し、声明を発表、イスラエルへのサイバー攻撃を宣言した。

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