“大きな空白”を作り出せ(1/2 ページ)

» 2012年12月11日 08時00分 公開
[純丘曜彰,INSIGHT NOW!]

著者プロフィール:純丘曜彰(すみおか・てるあき)

大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科哲学教授。玉川大学文学部講師、東海大学総合経営学部准教授、ドイツ・グーテンベルク(マインツ)大学メディア学部客員教授を経て、現職に至る。専門は、芸術論、感性論、コンテンツビジネス論。みずからも小説、作曲、デザインなどの創作を手がける。


 夏ならスイカ。冬ならケーキ。仕事帰りに商店街を通り抜けると、閉まりかけの店で夕方の特売。「え、この値段でいいの? だったら丸ごと」とは思うものの、「ちょっと待てよ。冷蔵庫に入るかなぁ」と考え込む。昨日の食べ残しだの、バターだ、ヨーグルトだ、それに、マヨネーズやケチャップなどの調味料で、あれこれごちゃごちゃ。なんて、やっているうちに、後から来たこざっぱりとした主婦が、「あ、それ、いいわね。ちょうだい」と即断即決で買っていってしまう。

 野っ原でもそうだ。100メートル四方もあれば、サッカーもできる。だが、そのどこかに木が1本生えているだけで、どうやっても正規のフィールドは取れない。せいぜい、その木のまわりをグルグル回って練習することしかできない。3時間も集中して考えてこそ思い浮かぶようなアイデアも、2時間のところで、どうでもいいセールスの電話にほんの3分じゃまされただけで、また一からやり直しになってしまう。

 大きいことをやろうと思うなら、始末が先だ。食べられるんだかどうだか分からないような残りものだらけでは、冷蔵庫に新たに大きなスイカなど入るわけがない。予定表が空いていると、職そのものまでなくなるような不安に駆られ、くだらない雑用をギシギシに詰め込みたがる人は多い。

 だが、そんなものは、なにも新しいことを生み出さない。むしろ、予定を立てる、というのは、いつでも大きな新しいチャンスがつかめるように、そういう、すっぽかしても大したことがないような、くだらない雑用をごっそりまとめて切り捨てて、自由に動ける空白を作り出すことだ。

 仕事に集中したいなら、電話がかかってきそうな重要な相手には、こちらから先にかけておく。途中でかかってきた電話は、自分の仕事が終わってからかけ直せばいい。

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