衆議院総選挙では何が問われているのか?藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年12月10日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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どうやって日本経済を導くか

 今回の選挙は、イデオロギー的なものでもないし、憲法改正を問う選挙でもない。どうやってデフレから脱却し、どうやって日本経済を導くかという選挙だと思う。原発はもはや使えないエネルギーになってしまったが、それで日本経済を支えることができるのか、再生エネルギーは原発の代替にはならないということが世界的に立証されつつあるのなら(例えばドイツ)、エネルギー政策をどうするのか、それを問う選挙だと思う。

 経済は、もともと人口減少、とくに生産年齢人口(15〜64歳)の減少が問題だということはつとに指摘されている。過去は人口の増加による「配当」があったが、今は人口の減少による「負の配当」になっているわけだ。あるエコノミストは経済が3%のインフレになり、実質で3%成長すれば1000兆円の国の債務などたちまち消えると言った。確かに計算上は正しい。しかし問題はどうやって3%のインフレにするのか、どうやって実質3%も成長するのかということであるのに、そのエコノミストは回答をくれなかった。

 国を豊かにする手っ取り早い方策は、人とカネを外から引っ張ってくることだ。日本の不動産価格が安くなっていることから、外国資本(欧米だけでなく中国や他のアジア諸国)が買いに入っていると報道されている。日本市場でのシェア拡大を狙って、小売りなどが新しいビジネスモデルを引っさげて参入してくることもあるだろう。

 もっと簡単なのは観光だ。安全で食事が美味しい日本の観光は競争力があるのに、それが発揮されていない産業だ。2010年の数字では、日本を訪れた外国人は880万人。世界で何と27位だ。もちろん2011年は大きく減った。世界で最も外国からの訪問客が多い国は、フランスだ。その数7753万人。日本とはケタが違う。もしかつての運輸省がもう少し想像力を働かせ、東アジアのハブ空港を作るという発想を持っていたらこの訪問客の数が数倍になっていたとしてもおかしくない。しかしハブ空港の役目は韓国の仁川空港に取られてしまった。早い話が、日本は国としても観光地としても外国から旅行客を集めようという発想はあまりなかったのである。

 もちろん日本が豊かになってきたのは、基本的には貿易立国を支える製造業があったからだと思う。日本の輸出依存度が過去それほど高かったわけではないとしても、輸出と内需がほどよい(少なくとも日本企業にとって)塩梅になっていたからこそ、日本はこれほど成長できたと思う。その意味では、池田勇人首相の「所得倍増計画」というのは大きかったと言えるのかもしれない。

 しかしこの製造業は、一部を除いてほとんど競争力を失っている。光学系は日本に唯一残った競争力のある産業と言われてきたが、これもスマホにやられて普及機は激減している。大げさな言い方をすれば、だんだんニッチな市場に追いやられていると言ってもいいだろう。もう一度この製造業の復活を目指すなら、一度、日本経済がどん底まで落ちて、その結果、円が安くなって価格競争力を取り戻したときかもしれない。ただその時に、日本がどのような状態になっているのか、それは想像したくない。

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