コラム
» 2012年12月07日 08時00分 UPDATE

「ドライゼロ」のヒットを導いた王道マーケティングリサーチ (1/2)

アサヒビールのノンアルコールビール「ドライゼロ」のヒットの影には、オーソドックスなマーケティングリサーチに基づく明快なコンセプト開発がありました。

[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 ノンアルコールビールは、ここ数年で急激に拡大した市場の1つですね。市場規模としては、ビールが年間4億ケースに対し、ノンアルコールビールは2000万ケース程度のようです。

 さて、アサヒビールが2010年に出した「ダブルゼロ」は、キリンビールの「キリンフリー」や、サントリーの「オールフリー」に太刀打ちできず、「一人負け」(シェアは2%と低迷)の状態でした。

 アサヒの「ドライゼロ」は、ダブルゼロの屈辱を果たすために開発され2012年2月に発売。2012年の売上は500万ケースの見込み。ノンアルコール市場2位のキリンフリーを抜き、シェア24%を上回ったと見られています。

 このように、発売以来、好調に売れている「ドライゼロ」の開発に当たっては、王道を行く、つまりオーソドックスなマーケティングリサーチが行われています。

 まず、ノンアルコールビールやビールを飲む頻度や量についての「予備調査」が実施されています。これは、本調査を行なうにあたって、調査の掘り下げの方向性を見極めるために実行されたものでしょう。

 次いで、本調査を2回実施。延べ対象者数は1000人という規模でした。調査の目的としては以下の2点。

1.ノンアルコールビールを飲む頻度、量、状況  (シーン)などの飲用実態を把握すること

2.顧客が持つ競合ブランドに対するイメージを把握すること

 1番目のノンアルコールビールの飲用実態で、アサヒの担当者が着目したのはビール愛飲者のノンアルコールビールを飲む状況です。

 例えば、「ビールをいつも飲んでいるが、翌日仕事が忙しいときは控えたい」「休肝日を作りたい」といった理由でノンアルコールビールが飲まれていたのです。

 従来、ノンアルコールビールは、妊婦さんや運転中など、アルコールが飲みたくても飲めない状況が想定されていました。しかし、ビール愛飲者が自らの意思であえて「飲まない」という選択をするときもあることが明確になりました。

 一方、ブランドイメージについては、「ポジショニングマップ」を作成したところ、オールフリーをはじめとする競合製品は、「健康」「女性的」といったイメージが強いものでした。また、味については「フルーティ」という評価で、ビールとはそもそも違うものという認識が強かったようです。

 一方、ポジショニングマップで空白地帯(ホワイトスペース)となっていたのが、「男性的」「ビールに近い」といったイメージ。

 以上のような調査結果の分析を踏まえ、アサヒのマーケティング担当者が打ち出したコンセプトは「ビールの代替品」というもの(これは、本当の意味でビールの代わりになる味やイメージということのようです)。

 ターゲットは、男性を中心とするビール愛飲者で、何らかの事情でアルコールを飲めない、あるいは飲まないときに選択してもらえるノンアルコールビール。男性的で飲み応えのあるもの。

 こうして、できるだけビールに近い味わいを実現したダブルゼロが開発されたというわけです。スーパードライをほうふつさせるシルバーのパッケージを採用したのも、「ビールの代替品」というコンセプトに沿ったものです。

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