なぜ「ストッキング」と「水虫薬」を同じ売り場で売るのか?カイモノマーケティング(2/2 ページ)

» 2012年12月10日 12時00分 公開
[澤地正人,Business Media 誠]
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クロスMDの効果は「三方よし」

 このように3つの類型に分かれるクロスMDですが、その効果は「三方よし」であると考えています。価格ではなく商品の価値を訴求するため、お客さまの理解度や満足度が高まります。売り手(小売業)にとっては買い上げ点数のアップ、作り手(メーカー)にとっては価格競争を避けて、競合商品のない場所でブランド認知を高められます。

カイモノ

クロスMDを仕掛けられないワケ

 クロスMDは、お店にとって売上額が上がるとてもオイシイ販売方法なのですが、実現には困難が伴います。その理由には小売業の内部事情が影響しています。

 その1つは、売り場別担当制という「縦割り組織」による弊害です。一般的に、野菜や果実などは生鮮品カテゴリーの担当、醤油やみそは加工食品の担当というように商品グループごとに担当者が決まっており、その人が商品の発注から商品陳列、演出といった売場管理を行っています。鍋コーナーに野菜とポン酢を並べるには、双方の担当者のコンセンサスを取らなければなりません。

 また、「どの売場を使うか?」という問題もあります。カテゴリーや売り場ごとに売上目標が決まっていますので、他のカテゴリーの商品を一緒に置いて、それが売れたとしても自身の成績につながらないのです。野菜売場で加工食品が売れても、生鮮の担当者には無関係ですから、場所を貸すのを渋ることも起こり得ますよね。

 もう1つの理由として「売り場の維持管理が面倒」という弊害もあります。商品が売れたら在庫を補充しますよね。カテゴリーが複数あるクロスMDの場合、担当外の商品を補充するのには手間が掛かります。その時間を自分が担当するカテゴリーの作業に使いたいと考えるわけで、クロスMD売り場の整備は後回しになっていきます。

 カテゴリーの枠を超えてクロスMDに取り組む企業も増えていますが、人件費を抑制するという点において、そこまでクロスMDに手を掛けられないのが現状かもしれません。

価格競争とデフレを脱却する処方せんになるかも

 最近、ユニクロ×ビックカメラの「ビックロ」が話題になりました(参照記事)が、これは「衣料品×家電」という売り方を模索する企業単位でのクロスMDといえるでしょう。今後どのような展開になるか分かりませんが、商品本来の価値や使われ方を訴求するクロスMDのような売り方開発はますます進んでいきそうです。

 「価値を伝えきる」ためのさまざまな方法を開発し、売り場から気づき、発見、感動を与えることができれば、顕在需要を取り逃さないだけでなく、潜在需要を掘り起こすこともできます。そうすれば、まだまだ内需の拡大も可能でしょう。大げさにいえば、クロスMDのような価値を伝えきる売り方が、価格競争とデフレを脱却し、日本経済の質的発展の処方せんになるのかもしれません。

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