ダルビッシュが目指す「史上最強」の投手像臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(1/3 ページ)

» 2012年12月06日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

著者プロフィール:臼北信行

日本のプロ野球や米メジャーリーグを中心としたスポーツ界の裏ネタ取材を得意とするライター。WBCや五輪、サッカーW杯など数々の国際大会での取材経験も豊富。


 来季はさらなる躍進が期待できそうだ。レンジャーズ・ダルビッシュ有投手のことである。

 2013年3月開催の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨む“侍ジャパン”へのメンバー入りを早々と辞退。かつてあれだけこだわっていた代表の座を捨ててまでメジャーリーグ2年目にかける本人の意気込みは相当なものだ。やる気に満ちあふれたダルビッシュに、米メディアも「来季はチームのエースになる」と太鼓判を押している。

ダルビッシュがナンバー1として2013年を迎える

 メジャー1年目の成績は16勝9敗、防御率は3.90。同じレンジャーズの投手陣の中で数字だけで見れば、今季18勝11敗、防御率3.29をマークしたマット・ハリソンのほうが上回っている。ちなみに彼はダルビッシュより1歳年上の27歳左腕。ワシントン監督からの信頼も厚い。

 それでも米メディアの共通見解は「ダルビッシュはハリソンよりも投球内容の平均値が高い」。その証拠に米スポーツ専門局「ESPN」は、レンジャーズの来季先発ローテーションについて「ダルビッシュがナンバー1として2013年を迎える。ハリソン、ホランド、オガンドが続く」とした。ダラス・モーニングニューズ紙(電子版)も同様。レンジャーズの来季ベンチ入り選手予想では、先発投手部門ではダルビッシュはトップで、続いてハリソンだった。

The Bill James Handbook 2013 The Bill James Handbook 2013

 野球を統計学的に分析する「セイバーメトリクス」の草分け的存在と称されるビル・ジェームズ氏もダルビッシュをエース格として見る。同氏が毎年11月に発行する「The Bill James Handbook 2013」によれば、ダルビッシュは来季32試合に先発し、214投球回で14勝9敗、防御率3.45、247奪三振と予想。一方のハリソンは先発33試合で203投球回、12勝10敗、防御率3.90だ。

 先発1番手となれば、メジャー1年目では成し得なかった開幕投手の大役に指名されることが濃厚。2013年4月2日(日本時間3日)、ダルビッシュは敵地のヒューストンで行われるアストロズとの開幕戦の先発マウンドに上がり、2年目のスタートを切ることになりそうだ。

 メジャー関係者および米メディアからの評価が高い点は、今季の新人王争いにおいても見てとれる。結果的に新人王の選考投票では全体の3位に終わって涙を飲んだものの、米メディアの間では「今季はライバルの上位2人(投票1位で新人王受賞者のマイク・トラウト外野手=エンゼルス、2位のヨエニス・セスペデス外野手=アスレチックス)のレベルが高かっただけで、ダルビッシュの成績は過去に新人王を受賞した投手と比べても遜色ない」ともっぱらの評判だ。

 メジャーの新人王はここ最近、野手が選出される傾向があり、1990年以降の新人王22人のうち、投手が選ばれたのは2000年のマリナーズ・佐々木主浩らわずか6人。そのうち先発投手は2006年のジャスティン・バーランダー、2011年のジェレミー・へリクソン(29試合で13勝10敗、防御率2.95)の2人のみだ。

 前出のバーランダーの2006年の成績は30試合で17勝9敗、防御率3.63。ダルビッシュは1年目で勝ち星こそ下回ったものの、奪三振数は221で当時のバーランダーの124を遥かに凌いでいる。

 クオリティスタート(先発して6回以上を投げ、3失点以内)も、ともに18試合。そう考えれば、ダルビッシュはいまやメジャーを代表する投手となったバーランダーの新人時代に匹敵する数字を残したことになる。やはり末恐ろしい存在といえそうだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.