なぜルーカスフィルムを買収したのか、“放送事業者”としてのディズニーアニメビジネスの今(3/4 ページ)

» 2012年12月04日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

コンテンツ分野の拡張

 2001年にディズニーはFoxファミリー・ワールドワイドも買収し、放送網をさらに強化した。そこで必要になったのが供給すべきコンテンツである。

 ご存じの通り、ディズニーはミッキーマウスを代表とする豊富なキャラクターや映像コンテンツを持つ。しかし、ウォルト・ディズニー亡き後、ディズニー本体が生み出したディズニーランドのアトラクションになるレベルのヒットコンテンツは、アラジンやライオンキングなど数えるほど。むしろ、外部プロダクションであったピクサーが創り出すコンテンツやキャラクターが、メインストリームとなっている状況にある。そして、ピクサーに次ぐコンテンツやキャラクターとして選ばれたのが、マーベル・コミックでありルーカスフィルムのスターウォーズというわけだ。

 映画の国である米国では、大作映画からさまざまな展開が始まる。メガヒットした映画の続編はもちろん、テレビシリーズ、アニメーション、キャラクターグッズ、アトラクションなどが生まれ、ディズニーのフランチャイズをフルに生かしたビジネスが可能になるのだ。

 映画を作り出すスタジオの中核になるのがザ・ウォルト・ディズニー・スタジオ。ピクサーやルーカスフィルムを買収することはこの部門のラインアップ強化につながるのだが、今後流通網の拡大とともにこの部門はより強化されて行くはずである。

 先に述べたようにハズブロ買収の噂もあるが、ディズニーが手に入れられないコンテンツは資金的には存在しないと言ってもいいだろう。しかも、ディズニーのイメージは抜群に良い。元祖ファンタジー&キャラクターであるディズニーが、より一層エンタテインメント界での地位を固めていく可能性は非常に高いだろう。

 次表はザ・ウォルト・ディズニー・スタジオの製作部門一覧だが、特に注目されるのはステージ製作だろう。ディズニーではテーマパークがライブそのものだが、そこにとどまらず世界中で本格的なステージ製作に取り組んでいるのだ。これは音楽やアニメの世界で、コンサートやミュージカルなどのライブエンタテインメントの割合が高くなっている流れにも通じている。

ディズニーの製作部門

【映像製作系】 設立年 内容
ウォルト・ディズニー・スタジオズ・モーション・ピクチャー 1950 『パイレーツ・オブ・カリビアンなどの』実写映画製作
マーベル・スタジオ 1996 マーベル原作作品製作
タッチストーン・ピクチャーズ 1984 『サイン』など大人向けの実写映画製作
ディズニーネイチャー 2008 自然映像、ドキュメンタリー製作
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ 1923 『ラプンツェル』などのアニメーション製作
ピクサー・アニメーション・スタジオ 1986 ピクサー作品製作


【音楽製作系】 設立年 内容
ウォルト・ディズニー・レコード 1956 旧ディズニーランドレコード。1989年に現社名
ハリウッド・レコード 1989 クィーンなどが所属すするレコード会社
ディズニー・ミュージック・パブリッシュング 音楽出版


【劇場系】 設立年 内容
ディズニー・シアトリカル・プロダクションズ 1993 ライオンキングなどのミュージカルを製作
ディズニー・オン・アイス 1981 ディズニー・オン・アイスを製作
ディズニー・ライブ! キャラクターショーや音楽&ダンスのステージ製作

 ステージ製作のスタートは、1994年のミュージカル『美女と野獣』。当時としては破格の予算を組んだこともあり周囲から危ぶまれたが、映画が大ヒットした実績もあり、初公演から大成功を収めた。

 同時にブロードウェイのニュー・アムステルダム劇場も取得。改装に2年以上かけ、ブロードウェイにおけるディズニー・ミュージカルのフラッグショップとして再スタートを切ったこの劇場で初演を迎えたのが『ライオンキング』だ。1997年に始まり、ブロードウェイ最高の予算をかけたと言われる『ライオンキング』は、世界12カ国で上演され、観客動員数5000万人以上という驚異的なヒットとなった。

 以降、『アイーダ』『メリー・ポピンズ』『ハイスクール・ミュージカル』『リトル・マーメイド』『アラジン』と続々と新作を発表。今後、ミュージカル分野においても一大勢力となるのは間違いないだろう。

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