オバマのキスを拒絶するスーチー女史の本音――ミャンマーで何が起きている?伊吹太歩の世界の歩き方(3/4 ページ)

» 2012年11月29日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]

景気回復のため、ミャンマーの軍部の意向に乗る米国

 ミャンマーの軍部の意向にまんまと乗っかっているのが米国だ。米国も多少、景気が回復しつつあるというデータなどが出ているが、それでも不況は不況。ミャンマーという新たな市場が突然出現すれば、乗っからない手はない。

 ミャンマーは人口6000万人で、鎖国に近い状態だったために市場に手は付けられていない。米政府はGEやペプシ、コカコーラなど米大手企業を後押しして、ミャンマー市場開拓を手助けしている。

 オバマが今回ミャンマーを訪れたのは、そうした流れからの経済的な要因が大きい。もっとも米国がオバマのミャンマー訪問の理由の1つに挙げる「民主化進展への評価」というのは、とって付けたような理由であるのが分かるはずだ。ミャンマーの民主化は、民政移管後の総選挙前から、そしてその後もほとんど根本的には進展していないといえる。

 さらに民主化が進んでいないのと同様に、少数民族への迫害も止めていない。そんな実情だからこそ、今回のオバマの訪問には時期尚早だとする批判が上がった。

 実は、米企業の経済進出を後押しするには最高のタイミングだったのだ。今年初頭からミャンマーに進出する企業、これから進出したいと考えている企業が、ミャンマーでビジネスを行う条件を定める「新外国投資法」の制定を待望していた。外国企業による投資条件や進出条件が大幅に緩和されると期待されていたからだ。

 毎月、「今月末には制定される」といわれ続けて1年ほど経った2012年11月2日、その新しい投資法がやっと制定された。そして、ホワイトハウスは8日にオバマのミャンマー訪問を発表した。「満を持して」というべきだろう。

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