コラム
» 2012年11月27日 08時00分 UPDATE

“異化”の視点が常識を打ち破る発想を生み出す (1/2)

既存の「ありかた」や「ルール」をまるで見知らぬことのように認識することを社会調査では「異化」と呼びます。「異化」の視点によってものごとを見ることで、常識を打ち破る新しい発想が生まれます。

[松尾順,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 有機野菜を中心とする食品を宅配するネット通販、オイシックスの初のヒット商品は2001年に発売した「ふぞろい野菜」でした。

 色や形、大きさなどが規格を外れている野菜は、農協などの正規ルートでは売れないため、自家用にするか、処分せざるを得ないのが現状。同社では、こうした規格外品を買い付け、「ふぞろい野菜」として販売。ニンジン、きゅうりなどは、通常品より3割程度安いのだそうです。

 この「ふぞろい野菜」が生まれたのは、同社スタッフが農家の収穫を手伝っている際に、畑の片隅に規格外品が積まれているのを発見したことがきっかけ。

 同社社長、高島宏平氏は、「売れば絶対にヒットする」と農家を説得したそうですが、最初はなかなか説得に応じなかった。「味は同じだが、傷があったり形が悪かったりするから出荷できない」と農家側は思い込んでいたのです。

 実際、農協ルートには規格外品は出荷できないのが現実であり「常識」。要するに、農家としては既存の「常識」にとらわれていたわけです。

 そこで、高島氏は、同社の会員に調査を実施。「形がふぞろいでも、安くて安全でおいしい野菜なら買う」という好ましい反応が得られた調査結果を農家に見せることで、ようやく規格外品の買い付けに成功したのだそうです。

 さて、社会調査において、「同化」「異化」という言葉があります。

 「同化」とは、見知らぬことを「既に知っていること」に当てはめて認識しようとすること。一方、「異化」とは、すでに知っていることをまるで「まだ知らなかったこと」のように認識してみて、「なぜか」と問い直してみることです。

 オイシックスの高島氏の場合、「規格外品は出荷できない、売れない」という常識をそもそも持っていなかったため、「消費者にきっと受け入れてもらえるはず」という発想につなげることができた。

 しかし、当事者である農家は当初、「正規ルートでは売れない」という既知の事実=常識で、「規格外品を販売する」という発想を認識し否定してしまった。つまり、「同化」の視点でものごとを考えてしまったわけです。

 まあ、これは無理もないことで、農家に限らず、あらゆる業界において「同化」の視点でしかものごとを認識できないために、新しい発想がつぶされてしまうということが頻繁に起こっています。

       1|2 次のページへ

Copyright (c) 2017 INSIGHT NOW! All Rights Reserved.

注目のテーマ

ITmedia 総力特集