ネガティブキャンペーンばかりの衆院総選挙でいいのか?藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年11月26日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

新しい何かを生み出すための通過点になるのか

 かといって民主党にこのまま任せるにはリスクが大きすぎるという気もする。この3年間、民主党は、自分たちの政策をどのように国民に説明して納得してもらうかという点で、右往左往してきたからだ。八ッ場ダム、日航再建、普天間移転、対中外交、対米外交、原発政策。さらに政治を透明化すると言いながら、肝心のところでは透明性を欠いた。

 その最たるものが福島第一原発事故だ。もちろん事故の最前線の情報は公表できるものもできないものもあったと思う。しかし議事録を残しておかなかったことは決定的な誤りだと思う。なぜなら、一つの国の政府が大震災そして原発事故に遭ったときに、国を動かす人々がどう行動したのかを誰も検証できなくなったからだ。

 民主党に任せられない理由はそれだけではない。消費税の引き上げを三党合意でまとめ上げたのは立派なものだと思うが、国民に負担を強いるのだから身を切ることが必要だというポーズに走ったのはいただけない。もし身を切るというのなら、難しい議論が必要な制度改革よりも、国会議員の歳費削減(時限ではなく恒久的に)や文書交通費をカットするだけでもいいはずだ。代議士を「家業」とさせないようにするには、その仕事は国家に対する奉仕であって、それ以上のものではないということをはっきりさせればいい。

 さらに民主党は、国民に負担を強いるのは、今回の増税だけではないということについて、口をつぐんでいる。財政再建のためには間違いなくさらに大幅な消費税引き上げが必要だろう。さらに社会保障給付の削減がどうしても必要だ(この点については自民党も民主党と同じ穴の狢である)が、国民会議に丸投げしてしまった。

 さらに「地方主権」とまで言っていた民主党は、この面ではほんの一歩を踏み出した(使途制限をしない地方交付税の一括交付)が、3年間の成果としてはあまりにも小さい。道州制をどうするのか、政令指定都市をどうするのか、将来の人口推移を見すえた議論はできないままである。

 総選挙を前に、各党はお互いの批判ばかりに精を出しているように見える。米国の大統領選でもネガティブキャンペーンがずいぶん話題になったが、日本の選挙も誇れる成果がないために、お互いに悪口を言い合うネガティブキャンペーンになってしまうのだろうか。この混乱した日本の政治状況が新しい何かを生み出すための通過点なのかどうか。夜明け前がいちばん暗いと慰めてみても、夜明けがいつ来るのか分からなければ、希望は持てないものだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.