解散報道に問題はなかったのか “はしょりすぎ”の罪相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年11月22日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 私は本業の作業中で党首会談のライブ映像を見ていなかった。それだけに、どのような文脈で首相が16日という日時に言及したかに注目した。それほど首相の発言は異例だったのだ。

 すなわち、時事が報じたように「自民が定数削減確約すれば」という前提条件があるかなしで、首相の発言の意味は読者の受け止め方が大きく変わった可能性があるのだ。

 換言すれば、党首討論で安倍総裁が首相提案に仰天し、腰砕けになるようなことがあれば「一六日に解散表明」という文言ばかりが一人歩きし、読者をミスリードする公算さえあったということなのだ。

 それとも、各社ともに首相・総裁サイドに深く食い込み、この日の党首討論の着地点を事前に把握していたから、このような“決め打ち”が可能になったのだろうか。後にニュース映像を見たが、安倍総裁の驚き方から察するにそれはないと断言できる。

 速報を一通り読んだ私は、Twitterのタイムラインを再度チェックした。首相が触れた“前提条件”に気付かず、毎日の記事を引用する形でリツイートする人が急増した。

 正直なところ、怖いと思った。Twitterの破壊的なまでの拡散能力で、ミスリード寸前の情報が一気に拡散したのだ。

 ちなみに、共同通信の速報は時事と同じく、こう伝えている。

 「議員定数削減などで決断するなら今週一六日に衆院を解散してもいい」と党首討論で野田首相

 一連の速報が流れたあと、Facebookもチェックした。知人の報道関係者がこんな言葉を漏らしていたのが印象的だった。

 「中継を見ていたが、あれが(首相の言動)が解散宣言だとはとても思えなかった。一連の速報ははしょりすぎの印象が強い」――。

 全く同感だった。

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