鉄道の不祥事から、何を学べばいいのか杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2012年11月16日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 この防護無線システムだが、実はデメリットもある。新宿駅付近など、路線が集まる場所で防護無線が発報されると、山手線も埼京線も中央線(快速)も総武線(各駅停車)も停まってしまう。埼京線と線路を共用している湘南新宿ラインも停まる。湘南新宿ラインは東海道本線、横須賀線、高崎線、東北本線を走行するから影響範囲は広くなる。

 風が吹けば桶屋が……というシャレではないけれど、新宿駅の山手線ホームで、酔っ払いや携帯電話に夢中になった乗客が電車に接触、防護無線が発報されると、遅れが波及して、高崎や鎌倉あたりの電車が遅れる場合もありうる。「遠く離れた○○線の人身事故で、なんで関係ないこっちの電車が遅れるんだ!」 と思った経験もあるだろう。しかし、こうでなくてはならない。防護無線は「隣の線路の列車を止める」システムだからである。

 とはいえ、防護無線は立体交差して互いに影響がなさそうな路線の電車も停めてしまうし、2010年には大阪で電波が飛びすぎ、10キロメートルも離れた電車を停めてしまった。現在の防護無線はデジタル化されており、「どの電車が発報したか」はすぐに判別できる。しかし「どの列車を停めるか」という仕組みにはなっていない。

 防護無線は「結果的に誤作動であっても、とにかく停める」というシステムになっている。しかし、最近はホームからの防護発報が頻発しており、列車の遅れが常態化している。せっかくデジタルにしたんだから、もうすこし賢い使い方ができてもいいとは思う。いや、もうそういう対策が始まっているかもしれないが。

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