コラム
» 2012年11月16日 08時01分 UPDATE

杉山淳一の時事日想:鉄道の不祥事から、何を学べばいいのか (1/5)

JR貨物で「機関車の安全装置が働かないまま6年間も稼働していた」と報じられた。同じ日、三重県の三岐鉄道で電車が脱線した。こういう報道があったとき、野次馬になるか、教訓とするか。あなたはどちらだろうか。

[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 11月8日、共同通信は「JR貨物の機関車に設置された防護無線装置が6年半も作動していなかった」という記事を配信し、いくつかのメディアが報じた。原因は取り付け時に配線を間違えたからとのこと。この機関車は東海道本線など広範囲で運用され、約150万キロを走行していた。

 防護無線は、鉄道事故の二次災害を防ぐ仕組みだ。列車が脱線などの事故にあった場合に、反対方向からの列車や、並行する路線の列車に危険を伝える役目がある。事故で列車が隣の線路に飛び出した場合、他の列車が突っ込むと多重衝突に及ぶからだ。

 報道された機関車は、この防護無線装置が作動しない状態だった。幸いにもこの間に事故に遭遇しなかったから良かったものの、もし進行方向で脱線や踏切事故があったら大惨事になっていた。関係者は肝を冷やしたことだろう。

防護無線のしくみ

 この防護無線の運用はどうなっているか。

 運転士や車掌が警報スイッチを押すと、防護無線信号が発信される。無線通信はだいたい半径1キロから1.5キロの範囲に届く。他の列車の運転士は、防護無線を受信すると直ちに列車を停車させる決まりだ。鉄道の安全システムの基本は「危険を察知したらとにかく止める」である。

 列車を停車させた後、それぞれの運転士は指令所と交信して事態を把握する。その後、路線全体の安全が確認されると、指令所は各運転士に運行再開を指示する。運転士が勝手に動かしてはいけない。

 防護無線の重要な部分は、このシステムが無線であることだ。線路に併設した信号配線や鉄道電話システムで伝えるのではなく、電波を空中に飛ばして広範囲に届ける。赤信号は同じ路線の列車しか止められない。しかし、他の路線の影響を防ぐためには、周囲の列車をすべて止めたい。そのために電波を使った防護無線が作られた。

yd_sugiyama1.jpg 鉄道は何重もの安全装置が組み込まれている(写真はイメージ)
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