――みなさんの意見を聞いていきましたが、大賞は「なんて素敵にフェイスブック」「絆創膏」「営業刑事は眠らない」「社会科学とネコ耳女」「ターゲット」「悲しい地歴」あたりかなと思っているのですが。
清田 「営業刑事は眠らない」が大賞かどうかみたいな話だと思うんですよね。
渡辺 それでいいと思います。
山田 ちなみに「悲しい地歴」は山田真哉賞でいいんじゃないかなと。
渡辺 「営業刑事は眠らない」で特に問題はないと思いますが、華がなくていじりづらいのがあるので、それをどうするかと言われるとどうしようかなというところですね。作品の完成度やコンテストの趣旨からすると、とてもいいと思います。
加藤 僕は「営業刑事」よりも「ターゲット」の方が評価が高いんですよ。これが一番うまいなと思うのですが、何か爆発してほしいですよね。こういう賞って未来に通じる感じ、すごくなりそう感がほしいというか。
吉岡 私は小説として「ターゲット」より「営業刑事は眠らない」の方が好きでしたね。
渡辺 僕も吉岡さんと同じ感じです。「ターゲット」は素材は面白いけどという感じです。もうちょっと書けたんじゃないかというところはあるんですよね。
清田 債権回収することって、営業なら必ず通らないといけない道なんですか?
渡辺 回収は商売として必須アクションです。
吉岡 私の実家はしがないガラス屋だったので、よく父親が駆けずり回っていました。ただ、アイティメディアではこんな専任の人はいませんよ。
渡辺 そこそこの規模になると、準専任みたいな人が出てくることも少なくないです。そもそもサービサーという債権回収の専門業者もありますよね。回収担当が書いた『督促OL修行日記』もベストセラーになっていますし。
吉岡 私は「営業刑事は眠らない」は逆に、フィクションっぽくてうまいと思ったんですよ。債権回収だけやっていればいい営業マンなんていなくて、実際には毎月「お前売り上げは目標にいったのか」と詰められているんです。ただ、中小企業にありがちな債権回収を引き受けている、見た目はパッとしないけどセミプロみたいな人がいるみたいなところでフィクションとして成り立っているという感想なんです。
渡辺 「特命係長・只野仁」パターンですよね。昼行燈で夜に大活躍という。よくあるパターンですが、これはこれでストーリーに入りやすいので便利なテンプレです。
吉岡 それに比べると、「ターゲット」は作者の日常生活を書いたのかな? という印象を受けました。。
渡辺 エンタテインメントにしようという気持ちは「営業刑事は眠らない」の方が強くあると思います。ビジネスノベルは結局、どうエンタメにして読んでもらうかという設計が普通の小説より難しいわけで、そこに手をかけたことは認識したいと思います。絵は地味ですが(笑)
山田 でも、絵師さんに才能があれば、「営業刑事は眠らない」でも頑張って描けるんじゃないですかね。
加藤 僕もいける気がします。
渡辺 受付で寝ている女の子の奥におっさんがいるとか(笑)。
――それでは大賞は「営業刑事は眠らない」で決まりですね。絵の方は頑張って交渉してみます。では、各審査員賞についてはどうしますか。山田さんからは「悲しい地歴」を山田真哉賞にということでしたが。
吉岡 じゃあ私は「なんて素敵にフェイスブック」を。
渡辺 僕は「不完全エスパー」にします。
清田 僕も「不完全エスパー」はすごく好きなんです。
渡辺 じゃあ2人で推しますか。ショートショート大賞だからショートショートを書かないといけないという感じが、あまりにも強すぎるところがあったので、逆にこれもいいかなと。
――加藤さんは「ターゲット」で。
加藤 はい。
山田 個人的にはインタビューでビジネスのことを語っているようにみせて実はヒモだったという「マイ月経営」が好きでしたね。あと、「俺の英語がこんなに使えるわけがない」も個人的には好きでしたが、オチで2人にくっついてほしかった。失恋で終わるのですが、ショートショートでそんなに悲しい終わり方しなくてもいいのにと思いました。あれがもうひとひねりあって、2人がくっついたら大好きでした。
――ソーシャルメディアでの反応を見ると、「お前の母ちゃん、デベロッパー」にいいねがたくさんついていました。
清田 タイトルだけでひきつけられましたね。
山田 ただ、タイトル負けしちゃっていましたね
渡辺 シューっと元気がなくなっていった感じで。
山田 ネタの繰り返しが一回りふたまわりあって、最後がもったいなかった。もう1つ、ひねれば良かったというのがありましたね。
清田 母ちゃんがギークパワーを発揮して息子の難題を解いてあげるみたいな。
吉岡 最後のもうひと跳ねが残念でしたね。
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