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» 2012年11月15日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:「言いたかったこととは違う」――なぜ取材された側はこう言うのか (1/3)

マスコミの取材を受けたものの、「言いたかったこととは違う」といったコメントを目にすることがある。なぜこうしたことが起きるのか。それは業界特有の「向ける」と「ツマミ」があるからだ。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 読者の中で新聞やテレビ、あるいは週刊誌の取材を受けた経験のある人はいるだろうか? 取材を受けたものの、後に掲載紙やオンエアを見て、「言いたかったこととは違う」という思いを強くした人もいるのではないだろうか。企業の新製品や新戦略を紹介する取材で、若きビジネスパーソンもいきなり矢面に立たされる場面があるかもしれない。先の当欄で「向ける」というマスコミ業界特有の用語を指摘した(関連記事)。今回は「ツマミ」について触れてみる。こうした知識を頭に入れておくだけでも、マスコミ対策の一助になる。

「ちょっとツマミますね」

 3年ほど前、私は小説のプロモーションの一環として某地方局のローカル番組に出演した。地元関係者の強いプッシュがあり、放映時間(シャク)は異例ともいえる8分間も頂戴した。

 スタジオにて、地元人気アナウンサーと対談しながら拙著を紹介するという高待遇。収録は事前に聞かされていた8分間を超え、9分強に及んだ。

 収録後、対談相手のアナウンサーが私にこんなことを告げた。

 「シャクをオーバーしたので、ちょっとツマミますね。ご了承ください」――。

 業界用語を知らなかった当時の私は、首を傾げた。すると、収録に立ち会ったプロデューサーが手振りでハサミのマネをした。つまり、編集する、カットするという意味だ。

 幸い、私が視聴者に伝えたかったメッセージがカットされることはなかった。オーバーした部分が少なかったこと、それに番組担当プロデューサーが「意図的なカット」を嫌う昔気質の人物だったのだ。

 その後、ツマミの弊害を別のテレビ関係者から聞いた。ある注目裁判が終わったあと、若手のディレクターが複数の識者を取材した。

 マズかったのは、このディレクターがツマミをやり過ぎたこと。裁判後のコメントだけに、専門用語がたびたび出てくる。ディレクターは自らが設定したシナリオに沿う形で複数のコメントを切り貼りし、識者が意図せざる方向にVTR素材をまとめあげてしまったのだ。

 当然の事ながら、オンエア後に「あんな意図で発言したつもりはない」と識者はカンカン。局の上層部に直接抗議が寄せられたという。

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