JR東日本は「鉄道業」……不正解ではないが、100点ではない儲かっている企業にはワケがある(2/4 ページ)

» 2012年11月14日 08時00分 公開
[渡辺聡、佐々木靖人,Business Media 誠]

駅前開発に力を入れている

 JRグループは言うまでもなく、元々は国鉄からの民営化で運輸、列車の商売が基本です。今でも収益の最大の柱であることは変わりません。しかし、国の重要政策として始めた事業だけあって、全国への路線敷設は概ね終えています。むしろ、地方の人口減少エリアを中心に、不採算路線をどうするか、といった課題があります。

 時代の変遷は致し方ないとして、上場企業である限りは売上や利益、事業の健全な発展を放棄するわけにはいきません。いくつかの重要戦略が提示されていますが、サイドビジネスとして「駅前開発」「ステーションシティ戦略」を展開しています。これまでにも鉄道運営のついでに駅売店や自販機などの小売りビジネスを行っていたので、ついでに何かを売る、というのは特に目新しいものではありません。ただ、乗車のオマケというレベルを完全に超えているのが、最近の同戦略の特徴です。

 下の図を見てください。現在、JR東日本が着手しているプロジェクトはこんなにあります。

 この資料は2008年に発表された同社の長期ビジョンですが、丸の内駅舎復元や渋谷駅の開発以外にも多くの駅でプロジェクトが進んでいます。

 JR西日本のプロジェクトになりますが、京都駅では段々になったビル設計、上に張られた空中回廊、レジャースポットなどは、テナント不動産としても注目を集め、見事な成功を収めました。

 成功したケースとしては、JR東海の名古屋駅も挙げられます。名古屋駅の場合は「駅ビルでコンパクトに用事が済むので駅の外に出なくなった」という声が少なからずあります。京都駅も似た傾向がありますが、名古屋駅の場合はより顕著に見えます。筆者も名古屋に住んでいる知人の家にお邪魔して帰るときは、夕方名古屋駅→知人宅にお邪魔→翌日名古屋駅駅前ビルで昼過ぎまで過ごす→夕方早めに帰る、といったパターンが珍しくありません。京都駅では、周辺観光スポットの多さから時間があれば少し近辺を回ろうという気分になりますが、名古屋では“タッチ&ゴー”的な動きが習慣づいてしまいました。

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