何が必要なのか? ストーカー殺人を繰り返さないために窪田順生の時事日想(3/3 ページ)

» 2012年11月13日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]
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これ以上被害者を増やさないために

 少年院を含めて5つの矯正施設の出入所を繰り返した後、別れ話を切り出した恋人の自宅に忍び込んで、包丁でメッタ刺しにした男がいる。ムショへ面会に行ったら、彼はイラつきながらこう言っていた。

 「ムショでは食器落としても教官の許可がないと拾えない。そんなバカみたいなルールが更生になんか意味あるんでしょうかね」

 意味なんてほとんどない。多くの受刑者は自由を奪われて怒りが増すだけだ。

 ひとくちに「犯罪者」と言っても、こういう者と泥棒や詐欺師とはまったく種類が違う。にもかかわらず、一律で同じように裁き、同じ刑務所に入れて、同じように整列して歩かせて、同じ工場で働かせる、というのが日本の矯正教育だ。

 ストーカーやらにはそれじゃ逆効果でしょ、そういう火に油を注ぐようなことをしてシャバに放り出して、本当にいいんですか、犯罪者によって刑務所を分けたりして、対応もカスタマイズすべきじゃないんですか――。

 なんてことを『週刊新潮』で「刑務所が犯罪再生工場になっている」というタイトルで主張をしたら、カチンときたのか、「監禁男」が服役していた千葉刑務所から、「更生の妨げになる」と面会禁止となった。

 こっちは法律にのっとってやってるんだから文句あるかというわけだ。小堤容疑者にベラベラと三好さんの住所を告げた逗子署の弁明もこれに似る。

 こういう事件の時、新聞の論説委員なんかは「警察に猛省を促したい」とか締めくくるのがお約束だが、今回ばかりはそういう建前みたいな話はいい。

 桶川ストーカー事件で猪野詩織さんが殺されてから、いったい何人が同じような目にあったのか。猛省とか、検証はもう十分やっただろうに。これ以上被害者を増やさないためにも、早急に法改正をし、小堤容疑者のような男を「犯罪者」ではなく「ストーカー」として扱い、専門の対処をすべきではないか。

 三好梨絵さんのご冥福を心からお祈りします。

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