あなたの街からバスが消える日杉山淳一の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年11月09日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

地方も都会もバスはリストラ

 バス業界の動きといえば、岡山県西部で路線バスを運行していた井笠鉄道が10月末で事業を終了した。11月2日には岡山地裁に破産を申し立てている。井笠鉄道は社名に鉄道の文字があるが、鉄道路線は1971年に廃止済み。バス事業が柱だった。

 残されたバス路線網について、当面は隣接する福山市を基盤とする中国バスが代替運行する予定だ。今後、井笠鉄道のバス路線網は整理され、運行本数も減るとみられる。ただし、今までのバスの利用者が井笠鉄道に支払った定期券は使えず、破産となったため残金も返却されない。そこで自治体は中国バスに対して、有効期間が残っている通学定期について、代わりの定期券を半額で販売するよう要請している。残り半額は自治体が補助するという。

 過疎化が進む田舎のバスは大変だ、と思ったら、都会のバスもリストラされている。大阪市交通局はコミュニティーバス、通称「赤バス」について、2013年3月に26路線の廃止を決定し、9月末に近畿運輸局に届け出た。理由は市バス事業の赤字対策とのこと。残り3路線も1年後に廃止する方針だ。

 赤バスは小型の低床車を使って運行されている。運賃は100円均一。大型バスが入れない道路や、大型バスでは採算が難しい地域の交通手段として発足した。全国に広まったコミュニティーバスの先駆者的存在でもあっただけに、廃止問題は地域交通を考える上で注目に値する事件である。利用者はお年寄りや育児世帯が多く、大阪市や橋下市長への抗議活動が行われている。1万人以上の署名が集まったとの報道もある。

 もっとも、橋下市長が掲げる大阪都構想では、大阪市のバス事業自体が再編の対象となっている。路線ごとに民間のバス事業者へ譲渡するか、廃止するかを選別する方針だ。赤バスも含めて廃止路線の今後については行政区が対策を講じるという。大阪の行政区といえば、8月に民間公募区長が就任したばかり。新区長の交通政策の手腕が試される。

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