コラム
» 2012年11月08日 08時01分 UPDATE

相場英雄の時事日想:大手メディアを訴えてはどうか “雁首”を間違えた問題 (1/3)

兵庫県尼崎市の連続死体遺棄事件を巡り、被告とは全く別人の写真を多数のメディアが取り違えて掲載した。このところメディアのチョンボが相次いでいるが、その背景には組織そして記者の劣化が始まっているからかもしれない。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先週の当欄でマスコミのスキル低下に触れた(関連記事)。その直後、またもや読者や視聴者の信認低下を招く一大事がメディア界を揺るがした。兵庫県尼崎市の連続死体遺棄事件を巡り、被告とは全く別人の写真を多数のメディアが取り違えて掲載・放映したのだ。私だけでなく、多くの読者は“空いた口が塞がらない”とお考えのはずだ。私が想像している以上に、メディアの劣化が始まっているのかもしれない。

致命的ミスの連鎖

 まずはことの経緯に触れてみる。

 尼崎市で連続死体遺棄事件が発生し、事件の中心人物である女性が傷害致死罪などで逮捕、起訴された。多数の人物の行方がいまだに分からないため、新聞やテレビをはじめ、多くのメディアが取材合戦を繰り広げている。

 事件の異常性とも相まって一般読者・視聴者の関心も高まっている。こうした中で、一大事が起きた。

 読売新聞や共同通信社、NHKなどが報じた被告の写真が全くの別人だったのだ。写真の当人が会見で名乗り出たことで、ミスが発覚した。

 読売は「あってはならないミスであり、本人確認が不十分でした。おわびします」との謝罪文を掲載、他のメディアも一斉にお詫びするという前代未聞の事態に発展した。

 容疑者や被告の写真は、業界内で“雁首(がんくび)”と呼ばれる。事件取材において、真っ先に記者が獲得に走るイロハのイ、なのだ。

 私自身は中途で通信社に入社。社会部や地方支局にいなかったので、事件取材の経験がない。ただ、かつての同僚たちからは、雁首取りに関してこんな話を聞いていた。「本人確認をした上で、絶対に間違いの許されない作業」だと。

 事件・事故が発生した直後、混乱する当事者やその家族、親戚を見つけ出し、古いアルバムや卒業写真から本人の写真を借り受け、転載する作業だ。

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