今の設置基準を満たしているだけでは大学としてダメ(1/2 ページ)

» 2012年11月07日 08時00分 公開
[純丘曜彰,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:純丘曜彰(すみおか・てるあき)

大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科哲学教授。玉川大学文学部講師、東海大学総合経営学部准教授、ドイツ・グーテンベルク(マインツ)大学メディア学部客員教授を経て、現職に至る。専門は、芸術論、感性論、コンテンツビジネス論。みずからも小説、作曲、デザインなどの創作を手がける。


 同業者の内情を話すと逆恨みを買いそうだが、若者を食いものにするのは見過ごせない。マスコミも、不景気の中、新設大学だけが広告費を湯水のごとく使う御大尽なので、その欠陥を隠し、その擁護に走っている。

 しかし、いまさら、いったい誰のための大学新設か。一部の短大は2年制だと定員割れを起こすので、4年制の大学にすることで倍の学費を徴収して延命することだけを考えている。そして、もはや事実上の失敗に瀕しているところも少なくない。

 文科省は1980年代から、高等教育を時代の変化に対応させるため、設置基準を満たしさえすれば大学創設を認可し、後は大学間の自由競争、学生自身の責任選択に任せる、としてきた。その結果、狭い日本に大学が800弱も乱立する異様な事態となった。

 しかし、この方針は、人口減少は一時的、との当時の認識の下に立てられたもので、少子化、バブル後の長期景気低迷による就職・結婚の困難化などとあいまって、短大志望者の激減、大学進学率50%化、多くの大学の定員割れや質的低下などを引き起こした。

 このため、この不良大学乱立に対し、文科省でも2010年にはすでに中央教育審議会に対し大学設置基準の改正を諮問。つまり、近々に大学設置基準が厳しくなるというのは、2年半以上も前から大学関係者では折り込み済みの話。また、2013年だけは数パーセントばかり18歳人口が多い、ということもあって、これが最後のチャンスだから、この年度までに駆け込みでなんとか四大化けしたい、という、思惑があちこちでうごめいた。

       1|2 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.