今や老若男女を問わず、愛されるようになったアニメーション。「日本のアニメーションは世界にも受け入れられている」と言われることもあるが、ビジネスとして健全な成功を収められている作品は決して多くない。この連載では現在のアニメビジネスについてデータをもとに分析し、持続可能なあるべき姿を探っていく。
製造業界などと同じく、アニメ業界でも賃金の違いなどから海外へのアウトソーシングが進んでいるため、日本のアニメ産業が空洞化している、としばしば語られる。
しかし、前回、前々回の記事「海外への外注増加で日本アニメは空洞化するか?」「米国アニメ産業はアウトソーシングで空洞化したか」では、アウトソーシングがあっても海外にライバルは育っていない現状を指摘した。
今回は、空洞化のもう1つの問題である「アニメ制作の要である原画アニメーターになるための訓練工程の動画が海外に発注されているため、国内のアニメーターが育たなくなる」ことについて考えたい。
若手が育っていないと言われるアニメーターだが、そもそもその年代分布はどのようになっているのか。統計データが存在しないので、次図のようにアニメ作画に関するまとめサイト「作画@wiki」を始めとした情報を参考に、生年が分かる現役アニメーター(2010年度までの作品履歴がある)の年代分布をまとめた。
ピックアップできたアニメーターは477人。日本動画協会の年間アニメ制作分数データをもとにJAnicAが2009年に推定した稼働アニメーター数は3100〜4500人で、その10%程度なので実態を正確に表しているとは言えないが、一定のトレンドはうかがえるだろう。
気を付けなければいけないのは、学校を卒業したばかりの動画マンや、原画に移行しているものの、クレジット頻度が少ないためにデータが公開されていない若いアニメーターがたくさんいること。この表では、生年が知られている(=社会的に認知度がある)アニメーターに限って取り上げているので、キーとなる人材の年代分布となっていることを了解していただきたい。
この図から読みとれる特徴は次のようなものである。
これは定年退職がない職制のためだろうが、最も年配の1938年生まれで『タイガーマスク』の作画で知られる木村圭市郎氏と、最も若い1991年生まれで『織田信奈の野望』で作画監督を務めた小嶋慶祐氏とでは、53歳の年齢差がある。職業年齢が長いということなのだが、木村圭市郎氏の場合、1962年にプロとして描き始めて以来、50年に渡って現役を続けていることになる。
表を見ると一目瞭然だが、1959年を境に急激に人材が増えている。これは、1963年からアニメ番組の放映が始まったことの影響によるものだろう。1960年前後生まれの子どもたちが小学生になるころには、日本初の30分テレビシリーズ『鉄腕アトム』の成功を受け、第一次アニメブームが巻き起こっていたため、大いに感化されただろうことは想像に難くない。
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