エンジニアの間で流行中、「退職ブログ」に意味はあるのかサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2012年11月05日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

「なるほど」と思いましたか? それともピンとこなかったですか?

 他人の退職ブログを読んでみて、「なるほど」と思った人は、今後の自分自身のキャリアについてあまり心配しなくてもいい人。逆に読んでもピンと来ない人は、今後のキャリアについて少し心配したほうがいい人である、その可能性が高いのです。

 退職ブログを書いている人はたくさんいますが、現状よく読まれているのは俗にエンジニア領域と呼ばれるところで働いている人です。内容は割とシンプルで、退職の報告、いままでその会社でかかわってきた仕事について、どんな人と一緒に仕事をしてきたのか、そして、その人たちへの謝意、今後どんなことに取り組んでいきたいのか、というフォーマットでまとめられていることが多いです。ここまで説明すると、多くの人が理解できると思います。実はこのブログ、期せずして「自分をアピールする材料」になっています。

 退職ブログを読めば、その人がどんな仕事をしてきて、どの程度の能力があり、どんな事業に今後興味を持ちそうか、すぐに分かります。そして、優れた退職ブログは、その部分の整理がとても上手くできていて、一緒に仕事をするパートナーを探している人(採用担当者に限らない)なら、コンタクトを取ってみたいと思わせる内容になっています。実際、退職ブログを掲載した人に対して「ウチで働きませんか?」というお誘いメールを送ったある企業の採用担当者によると、その人から来た返事が「御社で四社目です」というものだったというから、その効果は絶大だといえるでしょう。

スキルの可視化ということの重要性を考える

 「そんなの、有名エンジニアだからだろ? ごくフツーの一般人が退職しましたと書いても、そんなものそもそも誰も読まないじゃないか」という声が聞こえてきそうです。それは当然ですね。世の中にまったく知られていない人がブログを書いても読まれることはまれ(私のブログも!)です。だとしたら、退職ブログを書くことに意味はない、と思われがちですが、それは違います。退職ブログが成功する(この表現が正しいかどうかは議論の余地がありますが)には、キチンとした伏線が必要なのも事実です。

 そもそも、有名エンジニアといっても、誰でも知っているというほど有名人である必要はありません。その業界にいる人なら一目置いているというレベル。そうなるにも大変なことは十分承知していますが、彼らが何をしているのかをきちんと整理してみると、自分の参考になることも多いはずです。

 まず、彼らが有名になった経緯を考えてみると良いでしょう。業界で有名とされる人たちの多くは、アウトプットを盛んに行っています。例えば、ブログを書いているという人も多い。技術的なことを中心に、自分が学んだり経験したりして得たことを、積極的に開示しています。

 後に続く人が、自分が知りたいことを検索して、そのブログに触れる。そして、そのブログが評判を呼ぶことで、勉強会で講師をしたり、業界団体が主催するイベントでバネラーとして呼ばれたりという機会も増えてきます。そこまで来ると、業界で一目置かれる人になることは間違いないですし、退職ブログを書けば「おお、あの人辞めちゃうのか。次はどこに行くのかな?」と注目されることは請け合いです。

 ここではエンジニア領域を例に挙げていますが、マーケティング領域などでも同様のことが起き始めています。おそらく今後は、より広いジャンルで多くのビジネスパーソンにも同様なことが起き始めるといってもいいでしょう。重要なことは、体系的ではないにせよ、スキルの可視化とその公開を「自分自身の手で」やっているという点なのです。

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