なぜ尖閣諸島の防衛が重要なのか藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年11月05日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 今週火曜日、世界最強のリーダーを決める選挙が行われる。現職のオバマ大統領になるのか、それとも共和党のロムニー候補が勝つのか。日本から見れば、どちらが大統領になってもそう大きな変化はない。どこかの国のリーダーのように、いきなり「最低でも県外」と従来の方針を大きく変えるようなことは言わない。外交政策とは一貫性が重要であるからだ。

 我々はよく尖閣で日中が軍事的に対立した場合、米軍は出動するのかという問いを投げかける。そして米国防総省の公式的な返答は、日米安全保障条約第5条に基づいて、米軍は出動するというものである。

 先日、リチャード・アーミテージ氏とジョセフ・ナイ氏という2人の論客が来日して、若い人たちといろいろ意見を交換した。アーミテージ氏は共和党支持者、ナイ氏は民主党支持だが、日本に対する政策はそれほど変わりはない。

 ただ、アーミテージ氏がこういったのが印象的だった。尖閣を米軍に守れというのであれば、まず日本が(すなわち自衛隊が)その意気を示すべきなのである。そうでなければなぜあのような岩が突き出ているだけの島の守備あるいは奪回で米軍兵士が血を流さなければならないのか。そういった意味のことを語った。

 無論、尖閣諸島は地政学的に見て重要であることは論を待たない。よく言われることなので読者は耳タコだろうが、東を上にして中国本土と尖閣、そして太平洋が入るように見てみるとちょうど尖閣を含む列島線が中国の太平洋進出を阻んでいるように見える。

 これが中国にとってはいかにも邪魔なのだ。資源が眠っているという国連の報告書が出てからにわかに中国が領有権を主張しているのだが、資源だけではない。安全保障上の重大な場所をこの列島が占めている。だから一部の安全保障専門家は、通常型潜水艦に加えて、静かに海底に待機する原子力潜水艦を海上自衛隊に配備するよう求めている。

 実際、中国はミサイル原潜を配備しており、そのミサイルの照準はどこを向いているのだろうか。尖閣を含む列島線を越えて太平洋に出たいのも、米国をにらんでいるからだ。

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