それは魔法の完成――“mini”の追加で広がったiPadの世界(4/4 ページ)

» 2012年10月31日 10時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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Retinaの価値をさらに引き出す 強化されたiPad Retinaディスプレイモデル

Photo 後がiPad Retinaディスプレイモデル。外観は従来のiPad(第3世代)と変わらない

 続けて、リニューアルした第4世代のiPad、についても見てみよう。

 既報のとおり、9.7インチ版iPadは第4世代の「iPad Retinaディスプレイモデル」となった。注目のポイントは、iPhone 5の登場以降採用されているLightningコネクタに対応したことと、CPUとして従来より約2倍高速な「A6X」チップを搭載したこと。また、Wi-Fi+CellularモデルのLTEはグローバル対応になり、日本でもKDDIとソフトバンクモバイルで利用できるようになる。このようにデザインは第3世代を踏襲したものの、中身はかなり進化している。

 そして、iPad miniとの最大の違いが、その名に冠されているとおり、Retinaディスプレイを搭載していることだろう。2048×1536ドット表示の9.7インチIPS液晶は、先代同様にとても美しい表示を実現している。先述のとおり、iPad miniでは厳しい電子新聞や電子雑誌の表示も、Retinaディスプレイ搭載のiPadならばくっきりと読みやすくなるのだ。しかも今回のA6Xチップ搭載によって画面描画はさらに速くなり、Newsstandで文字・写真のレイアウトが複雑な雑誌などを読んだ際にも、ページの表示が第3世代iPadよりさらに速くなった。ここまでくると、紙の雑誌を読むのと遜色のないレベルだ。

 さらに高解像度・大画面のRetinaディスプレイとA6Xチップの恩恵を強く感じたのが、iPhotoによる写真加工である。iOS版のiPhoto自体は以前からあるアプリだが、その動作がさらに快適になったのだ。これはiPhone/iPadで撮影した写真を扱う際はもちろんだが、「Lightning to SD Card Camera Reader」でデジタル一眼カメラの写真を取り込んでiPhotoで加工する時により強く感じる。

PhotoPhoto 第4世代iPadは、iPhotoのようにクリエイティブ用途のアプリを使うのに最適だ

 RetinaディスプレイのiPadでデジタル一眼で撮影した写真を表示すると、その品質はまるでデジタルプリントされたのかのように美しいものになる。実は一般的なPCで表示するより、iPadのRetinaディスプレイで表示した方が解像度が高くきれいに見られるのだ。しかもiPhotoでは、その写真を指先1つで簡単にレタッチしていける。こういった作業が、A6X搭載の第4世代iPadではさらに快適になったのだ。デジタルカメラとセットで使うのなら、第4世代iPadはお勧めである。

iPad miniの追加で、日本のタブレット市場に火が付く?

 スティーブ・ジョブズ氏が当初、「7インチのタブレット」に否定的であったことは有名な話だ。当時の7インチタブレットではiPadの魔法のようなユーザー体験が実現できず、iPadに最適化されたすばらしいアプリをそのまま動かすことは難しかった。小型化は、iPadの世界観や絶妙なバランスを崩してまで行うべきものではなかった。

 しかし、デバイス技術の進歩が、iPadのユーザー体験とエコシステムを何も損なうことなく“iPad miniに凝縮すること”を可能にした。iPad miniはサイズが変われど、iPadそのものなのだ。

Photo

 そして、iPad miniの追加は、iPadの世界観を押し広げることに成功した。まず小型軽量で携行性が増したことで、iPadの利用シーンは確実に拡大するだろう。これはモバイルを中心に、アプリ/コンテンツ市場が拡大することを意味する。また、iPad miniはiPad以上に人前で使うことが増えるため、ケースを筆頭にアクセサリ市場が拡大することも必至だ。

 日本市場では、iPad miniが「iPadのブレイクスルー」になる可能性が高い。日本でもiPadはタブレット市場を牽引する好調な売れ行きであったが、北米市場に比べると、ポストPCとしての広がり・浸透ではやや後れを取っていた。その原因の1つになっていたのが、日本人の体格やライフスタイルにとって、これまでのiPadはやや大きすぎたところがあるからだ。その点、iPad miniは日本人と日本の利用スタイルにとってジャストフィットであり、他方ですでに豊富になっているiPad用アプリや周辺機器の力もあり、一般市場で一気にブレイクすることは十分に考えられる。

 “iPadの魔法”は、iPad miniが追加され、第4世代iPadと補完関係ができたことで完成した。それがどれほど魅力的で、私たちのライフスタイルを変える力を持っているか。11月2日に、店頭でiPad miniと第4世代iPadを触って確かめてほしい。

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