鉄道、映画、お金の関係を考える――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(後編)杉山淳一の時事日想(8/8 ページ)

» 2012年10月26日 08時55分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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杉山:ビジネスとしてやるなら、顧客の要望も聞いてくれないと。安全が大事という理由は分かるけれど、もう少し映画製作を理解してほしい。お金を取るなら、それなりに映画をとる環境を整えてほしい。しかも映画を見て、ロケ地に興味を持った人が来てくれる。列車に乗ってくれるわけですね。きっぷも売れると。

竹山:それをJR西日本は分かっているんですね。最近は東京の大手私鉄も使わせてくれるようになったけど、ある会社は料金が高くて、映画では使えるけれどテレビでは使えない。別の会社は使える駅や列車が限定されている。

杉山:一律に料金を決めるのではなく、作品ごとに料金に柔軟性を持たせてほしいということですね。作品性と宣伝価値と、そんな相談に応じてほしいなと。

竹山:予算が少ないと、鉄道ロケをやりたくてもやれない制作会社も出てくるわけです。2時間の鉄道サスペンスドラマは、鉄道ロケをやらざるを得ない。それなのに「物語の鍵になる駅が使えない」と嘆いている制作者もいます。

杉山:そういえば、ビートたけし主演のドラマ『点と線』の場合、「昭和の東京駅」のシーンは大阪にセットを作ったんですってね。

竹山:JR西日本の車両基地です。我々のEF58もそこで撮りました。そのくらいJR西日本は協力的なんですよ。

杉山:JR西日本はいい会社だなと。

竹山:いいというか、前向きですね。フィルムコミッションやロケーションサービスのあり方をちゃんと勉強していると思います。

杉山:撮影に協力するからタダで宣伝して、という「バーター」ではなく、お互いのメリットを付きあわせたビジネスにする。そうすると、鉄道が登場する映画はもっとたくさんできて、良い映像になって、鉄道で旅する人も増える。そんな関係になるといいですね。


 10月27日公開の『旅の贈りもの 明日へ』のもうひとつのテーマは「60歳が恋をしたっていいじゃないか」と竹山氏。人生の転機を迎えた時、誰に会いたいか。男性ならそこに「初恋の人」がいるはず。その恋を晩年に復活できたらいいな……という期待。果たして、その想いは叶うだろうか。そこに懐かしい電車が絡んでくる。多くの鉄道好き男性の共感を得る物語となっている。

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


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