鉄道、映画、お金の関係を考える――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(後編)杉山淳一の時事日想(7/8 ページ)

» 2012年10月26日 08時55分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山:最近の鉄道会社は映画やドラマ撮影に協力的なんでしょうか。以前はどこも車内撮影がダメで、駅構内もダメ。関東では北総鉄道が協力的で『電車でGO!』というゲームのCMで話題になりました。あと、京王電鉄は早くから積極的と聞いています。

竹山:ロケに関しては会社によって考え方が違いますね。ロケは一切ダメという会社もある。過去、撮影中に事故やお客さんとのトラブルがあったせいかもしれません。しかし最近では、撮影料を支払ってロケさせてくれる会社も出てきました。

杉山:撮影料を支払うんですか?

竹山:いや、それは当然のことだと思います。先進国では、撮影環境を整えてロケ場所を提供してくれます。宿泊代などをコミッションが出してくれる国や州もあります。だけど、それはそれとして、映画制作者もちゃんと撮影料を払うんです。街にお金が落ちる。海外では撮影料を支払うことで、警察が通路を通行止めにして、カーチェイスの撮影もできる。つまり、制作側とフィルムコミッションが対等なんです。

杉山:なるほど。

竹山:ギブアンドテイクなんです。日本の場合は公園の撮影料が無料になったりするくらいで。フィルムコミッションの立場が見えてこない場合もある。でも、撮影をする立場としては、撮影料をとられてもいいと思う。

杉山:日本でもフィルムコミッションが料金を請求したっていいんですよね。例えば、映画に使えるように街中を昭和の風景のまま維持していると。そこにはちゃんと費用をかけているんだから、街の風景を使うときは料金をくださいと。地域全体が映画村みたいな感じでスタジオとして機能するような。

竹山:そうそう。日本でも始まっています。映画の街として観光資源にしている鶴岡や酒田。それから、神戸や北九州も……。

杉山:そのほうが映画制作者も使いやすいですね。ビジネスとして割り切って交渉できる。いまは、映画撮影に協力しました、ロケ地はここです、というレベルだけど、もっと先に進んでもいいと。

竹山:だから鉄道会社が映画会社から撮影料をとってもいいんです。もちろん撮影でお客さんに迷惑をかけることもあるでしょう。それを避けたいという気持ちは分かります。でも「お金を取るならもっと広範囲で使わせてほしい」と思うこともあります。

福井県の美しい風景がスクリーンに(C) 2012「旅の贈りもの 明日へ」製作委員会

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