鉄道、映画、お金の関係を考える――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(後編)杉山淳一の時事日想(6/8 ページ)

» 2012年10月26日 08時55分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山:お城は観光地だけど、前川さんにとっては、あの桜の枝越しに見える場所が思い出の地なんですね。あの田んぼの中に咲く1本の桜……。あの桜は観光地ですか?

竹山:いや、違うんですよ。私はこの映画で一本桜を表現したくって、あの桜を探したんです。

杉山:地元では有名な桜なんですか? 淡墨桜(岐阜県)みたいな。

竹山:いや、地元の人でも知らないし、知ってたとしても「あんなところに桜があるんだ」くらいの認識でしょう。

杉山:でも、この映画で紹介されたらきっと観光名所に……。

竹山:なるでしょうね。

杉山:映像関係者が見たら、CMで使おう、ドラマで使おう、と思うかもしれない。地元のメリットは大きいだろうなあ。それにしても、日本って、これだけたくさん桜の木がある中で、あんな桜を見つけるなんて、とても大変なことでしょう。

竹山:助監督には「富山に良い桜がありますよ」「長野にも」と言われたんですが、やっぱり意味がないので、必死に探しましたよ。それで見つけたのがあの桜なんです。

鉄道会社の映画への協力

杉山:『明日へ』の撮影のために、廃車寸前だった489系の車籍を伸ばしたというお話でした。でも、そのためには、車体検査のお金が何百万ってかかるんですよね。

竹山:実は一度、秋にクランクインしようとしていました。しかし、恥ずかしい話ですけど、制作資金が集まらなかったことともうひとつ、私の頭の中に「桜を映画の主要部にしたい」って気持ちがあったので、撮影時期を秋から春まで延ばしました。

杉山:でも、JR西日本さんはよく車籍を延ばしてくれましたね。

竹山:いやー、本当にお世話になっています。映画撮影のために一度失った車籍を取り直して走行してくれました。

杉山:なるほど。でも、よくやってくださいましたね。

竹山:頭が下がります。

「旅人と地元に住む人の交流」もシリーズが描くテーマのひとつ(C) 2012「旅の贈りもの 明日へ」製作委員会

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