鉄道、映画、お金の関係を考える――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(後編)杉山淳一の時事日想(5/8 ページ)

» 2012年10月26日 08時55分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

撮りたい地域、撮らせたい地域

杉山:今回の福井で、もっと広範囲というと、東尋坊とか、一乗谷まで行ったら、そのさきの九頭竜湖とか。福井県としてもアピールしたい観光地があったんじゃないですか。

竹山:でも、観光映画だとしても、観光地ばかり見せてもしょうがないんですよ。

杉山:そのへんで、フィルムコミッションと映画製作者の間のせめぎあいみたいなものはないんですか。

竹山:ないです。なかったですね。地元の方は、この映画の意図をしっかり理解していましたから。

杉山:今回は立派なホテルが出てきて、福井にあんなところがあるんだと知りました。実際に泊まってみたくなりました。あそこは観光アピールポイントかな、と思いました。

竹山:でも観光って言うと、旗を振ったお姉さんがいて「こっちですよーっ」て連れて行かれる感じでしょう。旅って、自分の意志で動くことだと思うんです。その思いを映像とロケ地に反映させています。あのホテルは前川清さんと山田優さんが泊まるんです。旅人として。

杉山:「旅をしてください」というメッセージを込めているんですね。

竹山:それに、「観光ガイドに載ってないけれど、いいところあるよ」という提案でもあります。一乗谷や永平寺は山田優扮する女の子が観光している。それはそれでいい。でも、前川清は過去の思い出の地をたどるから、あれは観光ではなくて旅なんです。

杉山:登場人物の心情によって、観光地とそれ以外のロケ地を使い分ける。

竹山:そういうところを探していくことが、ロケハンの意味なんですね。

越美北線(JR九頭竜線)は一乗谷駅を通る

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