鉄道、映画、お金の関係を考える――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(後編)杉山淳一の時事日想(3/8 ページ)

» 2012年10月26日 08時55分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

ロケハンで候補地を蓄積する

杉山:映画では「福井の鉄道全部入り」って感じでした。

竹山:そうですね。

杉山:鉄道ファンには嬉しいですけど、それらを違和感なく入れ込むって大変だったのでは。

竹山:大変というか、やっぱり、鉄道っていいもんだと思います。駅と駅があって、それらは点なんだけれども、そこをつなぐ線があって、それが鉄道です。鉄道があって、線路があって、その線路のある空間が面、地域です。映画を作るときのロケハンも点から点を取材して、その移動は線になって、線から面になって、その面の上で映画を作ります。

杉山:撮影前の下見は大変そうですね。

竹山:例えば、古い家が必要だと、いまはインターネットで検索すればすぐに分かるかもしれない。写真があって、所在地の情報が地図で表示できて、それをロケハンに行き、その目的地だけ見て帰っちゃう。でも、我々の時代はそういった情報はなかった。家を見に行こうとしたら嗅覚を働かせるわけです。「ここにありそうな匂い」がすると。そこに行ったら、広範囲でざっくりと見てくるわけです。今回は使わなくても、あとあと、別の機会に使えるモノが出てくる。それが自分の「経験」になります。

杉山:『0:00発』では、架空の町「風町」が、山陰本線飯浦駅付近と瀬戸内のふたつの島の合成だったそうですね。映画では気づきませんでしたし、遠い町同士だから意外でした。

竹山:30年くらい前に作った映画でロケに行った真鍋島(岡山県)と大崎下島(広島県)が記憶に残っていて、その2つをつなぎあわせた。

杉山:架空のひとつの街として違和感なく描かれていました。

竹山:今回の『明日へ』は福井市・坂井市・あわら市を基本的なロケ地としていますが、実際は隣の大野市や、富山県の駅など、違うところでも撮影しています。映画って、ちっちゃい範囲でやってると、観客の興味もちっちゃくなっちゃう。広くなれば、地元の人や関わった人が増えて、見に行こうと思う人が増えるわけです。

杉山:参加する人や地域が増えると成功しやすくなると。

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