既得権益層を説得し、日本を変革する政治家は現れるか藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2012年10月15日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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機能しない「政治主導」

 民主党政権の「政治主導」ですっかり嫌気がさしてしまったかのような官僚組織は、復興予算の中にいろいろ紛れ込ませて恥じるところがない。まるで野田政権になって、官僚主導へ戻ったのをいいことに、復興とはおよそ縁のなさそうなものまで屁理屈をこねて入れてしまった。しかも政治家はまるでそれをチェックできなかった。

 その復興予算ですら執行は遅れている。被災地ではまだまだガレキの山が残ったままだ。神戸の時とは違って、被災地の小さなコミュニティを再建するのは難しい。仕事もなくなり、生活を支えるために他県へ移動すれば、元にはなかなか戻れない。だからこそ政治が主導してビジョンを描かなければならないのに、肝心のときに政治主導が機能しない。

 泥沼に足を取られたようになっている日本の政治を見透かすかのように、北方領土にロシアのメドベージェフ大統領が行き、竹島には韓国の李大統領が上陸した。そして尖閣である。石原東京都知事の「買収宣言」に慌てた国は、国有化に踏み切って「棚上げ」になっていた問題に火をつけてしまった。その一方で、普天間基地の移転問題はまったくらちがあかず、オスプレイの配備についても沖縄を説得できないままに既成事実を積み上げている。

 事態がどう動くのかまったく見通しのつかないままに、政治は漂流する。悪いことに復興予算で一息ついていた経済も息切れしかかっている。円高で輸出が青息吐息になっているだけでなく、生産そのものが減っているからだ。東南アジアでの日本車の生産は増えても、日本国内での生産が落ちる。空洞化だ。

 政治にビジョンとリーダーシップがなければ、いくら成長戦略を描いてもそれは絵に描いたもちにすぎない。なぜなら、新しい成長戦略は必ず既得権益を損なうことになるからだ。無駄を排除しなければ新しいことにカネは使えない時代だ。既得権益層を説得し、日本を変革する政治家、その顔が思い浮かばないところが日本国民の不幸である。

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