阪急グループ創業者である小林一三の言った有名な言葉:
「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ」
豊臣秀吉が織田信長の下足番からのし上がり、ついには天下を取った話は有名です。
小林は著書『私の行き方』の中でこう補足します。
「太閤(秀吉)が草履を温めていたというのは決して上手に信長に取り入って天下を取ろうなどという考えから技巧をこらしてやったことではあるまい。技巧というよりは草履取りという自分の仕事にベストを尽くしたのだ。厩(うまや)廻りとなったら、厩廻りとしての仕事にベストを尽くす、薪炭奉公となったらその職責にベストを尽くす。
どんな小さな仕事でもつまらぬと思われる仕事でも、決してそれだけで孤立しているものじゃない。必ずそれ以上の大きな仕事としっかり結びついているものだ。
仮令(たとえ)つまらぬと思われる仕事でも完全にやり遂げようとベストを尽くすと、必ず現在の仕事の中に次の仕事の芽が培われてくるものだ。そして次の仕事との関係や道筋が自然と啓けてくる」
要は、生涯、下足番になり下がるも、それを極めて次のステップに自分を押し上げるも、すべては本人の心持ち次第ということです。
演劇の世界に「小さな役はない。小さな役者がいるだけだ」という言葉もある。切り替えて言えば、「小さな仕事はない。仕事を小さくしている働き手がいるだけだ」ということになる。(村山昇)
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