面接官が就活エリートを欲しがるもうひとつの理由は、彼らは学生時代に例外なく「高度な挫折」を経験していること。東大や京大と言えば、日本中からえりぬきのエリートたちが集まる場所。みな「我こそはナンバーワン」と意気込んで入学するものの、そこにはもっと優秀な若者があふれているため、いきなり鼻っぱしをへし折られる。
人間は挫折によって成長する生き物である。巨大な壁にぶつかり倒れたとき、その経験から多くを学び、研鑽(けんさん)を重ねて壁を乗り越える努力をすることで、生命力とでも呼ぶべき強いココロが身に付く。壁が高ければ高いほど、挫折が多ければ多いほど、人間として成長できる。と考えると、究極のエリートのなかで味わう挫折ほど、得がたい体験はないだろう。このような高度な挫折が、就活エリートのメンタリティーを強靭(きょうじん)にすると、面接官は考える。
誰でも社会に出れば「上には上がいる」という現実を、否応なくつきつけられる。20代の経営者がゴロゴロいてショックを受けたり、体育会系営業マンのパワーに力負けしたり、高卒の叩き上げの部長にボロクソになじられたり……。見たこともないタイプのビジネスマンに圧倒され、自分を否定されるような経験を味わうもの。さらには、会社での役職が上がるにつれて責任が重くなると、そこで降りかかってくるプレッシャーは辛く厳しく、乗り越えるには相当の困難を伴うし、つぶされてしまうこともある。
これらを「高度な挫折」と呼ぶなら? 就活エリートは期せずして、上には上がいるという現実と多くのプレッシャーを、若いうちに体験していると言えるだろう。彼らは挫折の乗り越え方やリカバリー法を知っているだけでなく、そのときもっとも必要な「強靭なメンタリティー」を身に付けていることになる。これもまた、ビジネスに欠かせない資質。そして、誰もが手に入れることができない特性だ。
就活エリートは地頭が良いことに加え、挫折に対する心構えができていると、面接官は評価する。もちろん、就活エリートの全員が全員、強靭なメンタリティーを持っている保証はない。むしろ、エリートに限って打たれ弱いという意見もあるだろう。
しかし、そうした意見を差し置いても、彼らが他の就活生とは次元の異なる世界で生きてきたことは確か。さらに特筆すべきは、彼らはさらなる高みを目指して日々勉強を続けており、向上心はとどまるところを知らない。そんな就活生を、面接官が放っておくはずがないだろう。
――次回へ続く。
この連載は誠ブログの人気エントリーから誕生した書籍『就職は3秒で決まる。』の一部を抜粋、編集したものです。就活の最大の問題点は「ビジネスマンが就活・仕事に関して、本音で語ってこなかったこと」。例えば、多くの面接官が採用する「3秒ルール」は、面接官が語りたがらない本音です。いわゆる面接対策本のような小手先のテクニックではなく、面接時の心構えや失敗のない仕事の選び方など、メンタル面を中心に斬新かつ大胆に提言しています。就活のプロではないからこそ書ける「リアルな本音」を綴ったのが『就職は3秒で決まる。』なのです。
1971年、千葉県生まれ。ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。早稲田大学で心理学を学び、帝人株式会社に入社。半年で退職。その後PR会社で働きながら独自のマーケティング理論を確立、28歳でフリーランスとして独立。以降、マーケティングリポートの執筆、セールスプロモーションのプランニング、PRコンサル、新規事業の企画開発、農業ビジネス主宰など、業界をまたいで様々なビジネスを手掛ける。
学生時代は就職氷河期第1世代として就活を体験。独自の就活スタイルを武器に、面接の突破率は9割以上を誇る。このとき、就活にまつわる「ヒジョーシキな常識」に疑問を持ち、以降、ビジネスコンサルタント業の傍ら就活に関する取材を行う。著書『名刺は99枚しか残さない』(メディアファクトリー)
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