何もしなくても就職できる「就活エリート3万人」の実態就職は3秒で決まる。(2/3 ページ)

» 2012年10月12日 16時00分 公開
[荒木亨二(荒木News Consulting),Business Media 誠]

何もしなくても就職できる「就活エリート3万人」の実態

 まずは「就活の常識その1:就活生50万人のうち、採用対象は10万人」から説明しよう。就職氷河期と呼ばれるこの時代、「何もしなくても就職できる」と言われる幸運な就活生が存在する。その数およそ3万人、就活生50万人に占める比率はわずか6%。その希少価値の高さから、私は彼らを「就活エリート」と名付ける。

 この3万人は、面接官が「是が非でも採用したい!」と考える、選りすぐりの精鋭だ。このため面接やセミナーなど、就活のさまざまなシーンにおいて「最大級のアドバンテージ」を与え、とにかく彼らを入社させようと試みる。その光景はさながら、スタープレーヤーの獲得合戦に興じるプロスポーツの世界のよう。

 しかし、スポーツの世界と異なるのは、学生一人ひとりの資質をしっかり見極めたうえで「この学生は優秀」と太鼓判を押しているわけではないということ。「大学名」によって機械的に、就活エリートの3万人は決定する。何ともいい加減だが、これが就活の常識。まずは就活エリートに含まれる大学を紹介しよう。

3秒で選別される就活エリートの学歴
東京大学、京都大学、東京工業大学、一橋大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学、慶應義塾大学、国際教養大学

 就活エリートはこの10校のみ。ここに並んだ大学名を眺めるだけでも、偏差値重視の採用スタンスが見て取れるだろう。2校以外はすべて、トップクラスの国立大学で占められている。東大3200人、京大2900人といったように卒業生の人数は決まっているため、合計すると約3万人となる。

 注意すべきは、この分類は大学の偏差値ランキングにかなり近いが、“まったくのイコールではない”ということ。あくまでも面接官の視点で「ビジネスマンとして使えそうな学生」を選んでいるため、世間の大学の評価とはやや異なる。これらの大学に通う学生の偏差値がズバ抜けて高いことは誰でも知っているだろうが、彼らに匹敵するレベルの就活生はまだ他にもいる。

 なぜこの3万人のみが「就活特権」とも呼べるアドバンテージを持ち得るのだろうか。面接官はいかなる理由から、彼らに絶大なる信頼を置くのだろうか。これには2つの理由があるのだが、就活エリートに属さない学生は「自分に関係ない」などと思わず、むしろしっかり頭に入れておいてほしい。というのも、この理由にこそ「面接官独特の思想」が表れている。これを知るだけでも就活の特異性を理解できるだろう。

理由その1:就活エリートは圧倒的に「地頭が良い」

 そんなことは分かり切っていると思うだろうが、さにあらず、面接官が注目するポイントはかなり特殊だ。

 「地頭が良い」とは単に勉強ができることでなく、「限られた時間でやるべきことをやってきた」という高いパフォーマンス力を意味する。例えば、就活につきものの「SPI」。基礎能力や性格適性をチェックするテストの一種である。

 数多くの対策本が売られていることからも明らかなように、SPIを苦手にする就活生は多い。いくら勉強してもまったく理解できない者がいるくらい、難問が並ぶ特殊なテストだ。ところが就活エリートは、何の訓練もしていないのにこれをスラっと解いてしまう。彼らの知能は普通ではないのだ。

 また就活エリートは、英語から物理から世界史から、いつでも満遍(まんべん)なく高いスコアをたたき出す。私大文系にありがちな「数学はまったくチンプンカンプン」という苦手な分野がない。加えて、大学に入ると極端に学力が落ちる学生が多いなか、彼らの知識はいつまでも衰えることがない。あらゆる知識がカラダの一部のごとく染みついており、40歳を過ぎてもなお、数学の難解な公式が口から自然と出てくる。彼らがカバーする学問の広さと深さは尋常ではないのだ。

 ただし、勘違いしてはいけないのは、面接官が就活エリートに期待するのは、決してその「高い偏差値」ではないということ。5または6教科7科目が必須のとんでもない大学入試センター試験を、とんでもない高得点で突破してきた「過去の実績」に着目しているのだ。

 センター試験を通過するには、受験までの数年間という「限られた時間」で、すべての教科を克服する、つまり「やるべきことをやる」高度な能力が求められる。時間が足りなかったとか、化学だけは苦手といった言い訳はいっさい通用しない。

 同時に、勉強に対するセンスや生まれもった才能も重要だろう。時間をかけて努力を重ねたとしても、だれもが突破できるような柔なテストではない。「限られた時間でやるべきことをやる」ことこそ、実は「ビジネスの基本」。言い訳は許されず、結果がすべての世界。面接官が文句なしに就活エリートを評価する地頭の良さとは、こうした過去の「高いパフォーマンス力」を意味する。

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