『エヴァ』から『009』まで――春夏よりアツイ秋冬劇場アニメを紹介しようアニメビジネスの今(2/5 ページ)

» 2012年10月10日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

史上最高の秋冬シーズン

 その地味な秋冬シーズンだが、今年に限っては春と夏のシーズンを大きく上回りそうな気配がある。

 春はドラえもん以下の定番作品がほぼ予想通りの成績を収め、夏に関しては『おおかみこどもの雨と雪』が興収40億円以上(現在41億円超でまだ上映中)と大健闘したので、ジブリ作品なしでも平均的な成績をあげることができた。

 『おおかみこどもの雨と雪』に関しては、7月10日の本連載『細田守作品からNARUTO、海外勢まで――今夏劇場アニメの行方を占う』で興行収入予測を立てたが、そこで「?」としていた数字は35億円に設定していた。前作『サマーウォーズ』の倍は行くとは確信しており、ひょっとして『コクリコ坂から』の44億6000万円に迫るのではと思っていたが、実際ここまで接近したのはすごいことである。逆に、今年『おおかみこどもの雨と雪』がなければここ十数年で史上最低の夏シーズンに終わっていた可能性もあったので、この作品の大ヒットを心から喜びたい。

細田作品興行収入推移(単位:千円、日本映画製作者連盟資料などをもとに筆者作成)

 このように春と夏のシーズンがほぼ平年並みだった2012年だが、秋冬シーズンラインアップを見ていると春夏を上回るのは確実と思われる。それもかなり上ぶれする可能性があるのだ。このまま行くと夏興業が年末に伸びたと推定される『ハウルの動く城』があった2004年を除き、史上最高の秋冬シーズンとなる可能性がある。さらに、その余勢をかってジブリ作品がない年としての年間興行収入記録まで更新しそうなのである。

 夏休みは映画興行の大本命だが、洋画などの大作が中心で、ジブリ作品のような興行実績がないアニメはブッキングしにくい。そのため、多くの定番アニメが春休みにシフトしていたのだが、こうした中、子どもの長期休暇のない秋興行が活性化しているのは、少子化や、子どもの動員を期待しないアニメが増えていることが背景にあるのかもしれない。

2012年秋冬シーズンの強力ラインアップ

 次表は今年の秋冬シーズンに公開される主要劇場アニメ作品のラインアップ。

 10〜12月公開の主要劇場アニメ作品数は16作品。2008年9作品、2009年13作品、2010年12作品(併映作品を1作品と見なして)、2011年10作品となっているのでここ5年で一番多い。その意味でも興行収入が期待される年ではあるが、次に個々の作品について述べていきたい。

2012年秋冬シーズン公開主要劇場アニメラインアップ

タイトル 公開日 配給
神秘の法 10月6日 日活
魔法少女まどか☆マギカ 始まりの物語 10月6日 アニプレックス
魔法少女まどか☆マギカ 永遠の物語 10月13日 アニプレックス
伏 鉄砲娘の捕物帳 10月20日 東京テアトル
マクロスFB7 銀河流魂 オレノウタヲキケ! 10月27日 ムービック
009 RE:CYBORG 10月27日 ティジョイ
映画 スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ! 10月27日 東映
バイオハザード ダムネーション 10月27日 ソニー
GOTHICMADE ゴティックメード-花の詩女- 11月1日 角川
ねらわれた学園 11月10日 松竹
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 11月17日 ティジョイ
ハルのふえ 12月1日 東京テアトル
劇場版イナズマイレブンGO VS. ダンボール戦機W 12月1日 東宝
ONE PIECE FILM Z ワンピース フィルム ゼット 12月15日 東映
映画かいけつゾロリ だ・だ・だ・だいぼうけん! 12月22日 東京テアトル
劇場版 青の祓魔師(エクソシスト) 12月28日 東宝

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