なぜ日ハムは優勝できたのか? 新米監督・栗山英樹の人心掌握術臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/5 ページ)

» 2012年10月10日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

日ハムの精神的支柱、稲葉選手も高く評価

 アメとムチを巧みに使い分ける熱血監督を主力選手たちはどう見ているのか。今季2000本安打を達成したチームの精神的支柱・稲葉篤紀に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

「あそこまで積極的に話す監督は今まで見たことがなかった。普通、ああいうことはコーチがやることだから。なにより監督はチーム状況が悪くなったときでも、あのスタイルをずっと貫き通していることがすごいと思う。選手は監督やコーチの顔色を気にしているから『今日は話しかけづらいな』とか思うけど、栗山監督はそうした不安をわれわれに与えない」

 今季18年目の稲葉はヤクルトと日本ハムで多くの監督の下、プレーしてきた実績を持つ。それだけに、その言葉に重みと説得力があるのは言うまでもない。

 確かに世の指揮官は選手とのコミュニケーションを密に取らない人物がほとんどだ。現役時代から周囲に持ち上げられていた「大物監督」は妙なプライドが邪魔をして「面倒くさいから」「嫌な顔をされたくないから」と選手への重要な伝達をすべて担当コーチに任せてしまう傾向がある。結果としてチーム内での信頼を失っていくという悪いパターンが、これまで何度も繰り返されてきた。そういう意味でも栗山監督は、旧態依然とした日本プロ野球界に風穴を開けたといえる。

 そして、栗山監督の指揮官としての資質を事前にリサーチして白羽の矢を立てた日本ハムの球団戦略も大きく評価されて然るべきだろう。2003年の北海道移転と同時に「スカウティングと育成で勝つ」という理念のもとに独自の「ベースボール・オペレーション・システム(BOP)」を導入。選手情報のすべてを数値化し、チーム作りの根幹を明確にドラフト戦略に置いた。BOPの理念を正しく理解し、ダルビッシュら大物が抜けてもその場しのぎの安易な補強に頼らず現有戦力の底上げを実践できる適任者が、栗山監督だったのだ。

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