なぜ日ハムは優勝できたのか? 新米監督・栗山英樹の人心掌握術臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/5 ページ)

» 2012年10月10日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

選手への信頼、「火だるまになったまま自信を失わせたくないんだ」

 開幕前の春季キャンプで栗山監督が、まず心がけたのがチーム力の底上げ。過去3年間、勝ち星のなかった6年目左腕の吉川光夫に「今季ダメならばオレが引退させる」とハッパをかけ、結果としてリーグトップの防御率1.71、同2位の14勝をマークする「ポスト・ダル」に育てた。

 攻撃陣でも同じ。5年目の中田翔は6月末まで打率が2割に満たなくても「まったく心配していない」と言い切り、4番で起用。かつては「超甘ちゃん体質の持ち主」とまで評され、長らく伸び悩んでいた未完の大器をリーグ2位の24本塁打、同3位の76打点を残す主砲として見事に覚醒させた。

 リリーフ陣の宮西尚生と増井浩俊、武田久に対しても全幅の信頼を寄せ、終盤には登板過多による疲れも見えたが、たとえ試合がひっくり返されても使い続けた。吉井投手コーチら周囲の首脳陣から「休ませましょう」と進言されても、栗山監督は首を縦に振ろうとせず、こう口にしたそうだ。

「オレは彼らを信頼しているし、火だるまになったまま自信を失わせたくないんだ。心中する覚悟はできている」

 今年のパ・リーグ終盤戦は群雄割拠。一敗が命取りとなる戦いの最中で普通ならば「勝ちたい」と思ってつい動きたくなってしまうものだが、腹をくくっていたのだ。

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