なぜ日ハムは優勝できたのか? 新米監督・栗山英樹の人心掌握術臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(1/5 ページ)

» 2012年10月10日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

著者プロフィール:臼北信行

日本のプロ野球や米メジャーリーグを中心としたスポーツ界の裏ネタ取材を得意とするライター。WBCや五輪、サッカーW杯など数々の国際大会での取材経験も豊富。


日ハム 北海道日本ハムファイターズ公式サイト

 2012年のプロ野球パ・リーグで熾烈(しれつ)な争いを制し、頂点に立ったのは「シロウト」の監督だった。チームを3年ぶり6度目のリーグ制覇に導いた北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹監督(51)は今季就任1年目だ。

 プロ野球の長い歴史においても、コーチ経験のない指揮官が1年目にいきなり優勝するのは、1950年の毎日(現ロッテ)・湯浅禎夫監督、2004年の中日・落合博満監督以来、史上3人目の快挙という。

 いや……。1990年の引退から22年。これだけのブランクがあり、さらに現役時代に突出したキャリアがあるわけでもない人物が、いきなり一軍の監督に就任して結果を残したのは、おそらく史上初めてのことだ。

 開幕前、日本ハムを優勝候補に挙げる野球評論家は皆無に等しかった。それどころか、某有名評論家は「現場経験のない素人が簡単に勝てるほどプロ野球の世界は甘くない」。新指揮官をバッサリ切り捨て、チームの予想成績も「Bクラス」と断じていた。

 それもそのはず。開幕前の戦力を分析すれば、日本ハムに上がり目を期待できる要素はほとんどなかったからだ。昨年オフに先発の大黒柱・ダルビッシュ有が大リーグのレンジャーズへ移籍。その穴を埋めるべく巨人との競合を覚悟しながらドラフト1位で「強行指名」した東海大・菅野智之も結局は獲得に至らなかった。

 エースが抜けたにもかかわらず特に大きな補強を行わないまま、手腕が未知数の栗山監督に指揮権を委ねたのだから日本ハムの下馬評が低かったのも無理はないだろう。

 しかし、こうした大方の予想を新指揮官は完全に覆した。一体なぜ、勝てたのか――。結論から言えば、まったくブレることのない「情熱采配」と類稀な「人心掌握術」を兼ね備えていたからだ。

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