コラム
» 2012年10月09日 08時00分 UPDATE

粗利率39%! でんかのヤマグチの恐るべき顧客管理

「返報性の原理」を徹底することにより、粗利率39%を達成している街の電器屋さんの「でんかのヤマグチ」。その秘密の一端は、徹底した顧客管理にもあるようです。

[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 マスメディアでも頻繁に取り上げられている、町田市のパナソニック専売店「でんかのヤマグチ」は、既存客にとことん奉仕することで「高値」(大型家電だと量販店・ネット通販より10万円高いこともある!)でも購入してもらえる親密な関係を形成・維持しています。

 日経MJの最新記事(2012年10月5日)によれば、営業担当社員12人がそれぞれ400〜500世帯を担当しているということなので、現顧客数は6000人前後なのでしょうか。顧客管理を開始した10数年前は3万4000人、2011年時点では1万2000人ということでしたから、上記6000人というのは、全顧客リスト1万2000人のうち、営業担当者が親密な関係を保っているお客さんの数なのかもしれません。

 ヤマグチの営業担当は、自分の担当家庭にある家電品の状況をきっちり把握しているだけでなく、お客さん外出時の留守番、旅行中の水遣り、飼い犬の散歩などを月数回引き受けており、まるで

「何でも屋さん」のようなサービスを無料で行っています。これは、電球の取り付けなど、家電品購入に伴う本来のサービスとは異なるものですから、「裏サービス」と呼ばれているようです。

 これはまさに「返報性の原理」(相手の喜ぶことをまず提供することによって、相手に「借りを返さなきゃ」と感じさせること)の活用であり、結果的に「遠くの親戚より、近くのヤマグチ。買い物だけの付き合いじゃないからこそ買い物する」とまでお客さんに言わせることができるわけです。

 さて、ヤマグチの顧客管理も徹底したものです。まず、クレームが多い客、極端な値引きを求めるお客さんはリストから除外します。そして、各顧客の「累計購入金額」「最終購入時期」をそれぞれ3段階にセグメントして9つのマトリックスを作り、各マトリックスへのアプローチ方法を最適化しています。

 ちなみに、累計購入金額は以下の3段階にセグメント。

  • 100万円以上
  • 30万円〜100万円
  • 30万円未満

 最終購入時期のセグメントは以下の3段階です。

  • 1年未満
  • 1年以上3年未満
  • 3年以上5年未満

 なお、最終購入日が5年以上前のお客さんは、どんなに馴染みでも顧客リストから外すことで、可能な限り、顧客リストをアクティブな状態に維持しているようですね。

 ヤマグチでは9つのマトリックスのうち、「最上客」とでも呼べる「1年以内に購入し、累計購入金額100万円以上」のお客さんについては、重点的に訪問営業やDM配布を行なっています。このように、顧客リストをできるだけ絞り込み、優良顧客に重点的にアプローチする一方で、新規開拓はクチコミ、紹介だけとのこと。それでも、毎月60〜70世帯が新規客として増加しているようです。

 既存顧客を大切にすることで、「お客さんがお客さんを連れてくる」という理想的な状態になっていますね。でんかのヤマグチは、中小企業だからこそ実行可能なCRM戦略の典型的な成功例であり、見習うべき点が実に多いと思います。

※上記内容は日経MJ(2012年10月5日)の記事を参考にしました。。

 →松尾順氏のバックナンバー

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