「お話しする機会」というセリフが、就活好きな就活生を生み出しているサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)

» 2012年10月08日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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その場所を維持するための「就活大好き就活生」

 社会人との接点を作ることで、就活生たちに安心が生まれるなら、それが「居酒屋での交流会」による、たとえチラ見せであっても、十分機能していると私は考えています。ただ、その弊害はゼロだともいえません。その1つが「就活が大好きな就活生」を作り出してしまう、その土壌になってしまうこと。実は、こういうタイプの支援の多くは、先細ることが少なくありません。主催者が情熱を失えば、交流会自体が自然消滅することも多いですし、それ以外に、支援する相手が尽きるのも原因になります。いまの就活生が内定したら、支援する相手がいなくなる。支援したいのに支援できない状態。そうならないためにやるべきことは1つしかありません。支援対象者の勧誘です。

 こういう場所に足を運ぶと「内定しても、この会に来てくれよな」「後輩たちをジャンジャン連れてきて」と、主催者が内定者と話をしている光景を見かけます。彼らの言い分はこうです。「支援の必要がある就活生は、この会の存在を知らない。それで不幸を生み出すのはかわいそう。彼らにも社会人との接点を提供するために、内定者からの誘いは大切だし、就活生が内定者の話を聞くことも重要。彼らの話が単なる経験に過ぎなかったとしても、それは受け手が判断すればいいことです」。

 交流会に参加して、熱く見える大人たちに触れ、自分たちも就活生を支援したいと考えるようになった内定者たちは、もちろんこの申し出を嬉々として受け入れ、後輩たちを勧誘します。そして気がついたら「就活ばかりしている学生生活」になってしまうのです。単なる手段のはずの就職活動が、手段から目的に変わってしまう。

 そういう会を主催する社会人たちの多くは本来、イマドキの就活のひずみを問題視し、それを憂い、就活生を支援するという行動を始めたはずです。しかしいつの間にか、支援する対象者を確保する行動をし、さらに就活を好きになる学生を生み出してしまっているというのが現実です。

 こんなことを書くと、「現状が変わらないからです。企業や就活サイトの責任です!」という声が聞こえてきそうですが、「間違っている」と叫びつつ、その行為を好きになる人たちを作り出しているという側面も見逃してはならないはずです。社会人と就活生が「お話しする機会」を提供するはずだった交流会が、いびつな進化を遂げているのを見ると間違いなく問題だらけだと、ひずんでしまった新卒採用の周辺に身を置くものの一人として、ここでつぶやいてみるのです。

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