「お話しする機会」というセリフが、就活好きな就活生を生み出しているサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2012年10月08日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

「お話しする機会」という言葉が乱用される

 多くの企業はお金をかけてリクルーティングサイトを作っています。従業員にインタビューをし、その人の言葉で仕事について語らせることで、その大変さや面白さを就活生に伝えています。会社説明会やインターンシップで、ビジネスとはこういうものと繰り返し説明しています。それにもかかわらず「社会人と就活生の交流が必要、そのための接点を作ることは大切だ」と声を上げる人がいて、それを就活生支援だと称しているのです。

Business Media 誠を運営しているアイティメディアにも新卒採用ページがあり、社員インタビューが載っています

 なぜそうなってしまうのか。そこには「企業は嘘をついている」という大前提があるからです。リクルーティングサイトに掲載されている情報は建前、従業員のインタビューはきれい事、会社説明会は核心に触れることはない。そう多くの就活生は思っているのです。

 だからこそ、就活生同士が情報交換できるサイトなどがよく利用されていたのですが、最近はその情報も偽りの部分が増え始め、価値を失いつつあるのが現状です。そうなると、就活生は実際に働いている従業員に直接話を聞いて、ウソ偽りない情報を得るしかありません。

 ただ、これがとても難しいのです。かつては学校の就職課に行けば、先輩たちがどこに就職したのか、ある程度把握できました。OB、OGを紹介してもらって、個人的に話せば、生の声を聞くことができました。しかし今は、個人情報保護の観点からそういう開示はされませんので、就活生は社会人との接点を絶たれることになります。サークル活動などを通して先輩と交流していれば別ですが、そういう接点のない就活生は、いよいよ道がなくなってしまいます。そう、「お話しする機会」がないのです。

 就活生と社会人の交流の場は、そういう接点がない就活生にとって、情報収集のまたとないチャンス。ビジネス社会のリアルを、知っておくことが就活には重要だと気づいた就活生は、こういう場所を利用して、積極的に人とのつながりを深め、就活を優位に進めます。ビジネス社会をチラッとでも見ることによって、建前の多い情報だけでなく社会人の本音の部分も知っている「気になれる」。先輩訪問も難しくなった今、そうすることでようやく、就活生たちは安心して就活に取り組むことができるのかもしれません。

 「だったら、企業が包み隠さずに、本当のことを言えばいい!」とお叱りが聞こえてきそうです。まったくその通りだと私も思っています。ですが、企業にはそれができない事情があるのです(別の機会に書きます)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.