コカ・コーラ ゼロのブランド担当者に聞く“ゼロ戦争”の行方(1/3 ページ)

» 2012年10月05日 17時00分 公開
[Business Media 誠]

 コーラやサイダーといった人気商品を抱えながら、少子高齢化による消費層の減少などで2000年代半ばまで縮小傾向にあった炭酸飲料市場。全国清涼飲料工業会の統計によると、1990年代は生産量トップだった炭酸飲料だが、2001年にコーヒー飲料に逆転されてしまった。

 そんな炭酸市場を再度活性化させたのが、カロリーゼロ※などを売り物にしたゼロ系炭酸飲料だ。2006年にサントリー食品(現サントリーフーズ)がペプシネックス、2007年に日本コカ・コーラがコカ・コーラ ゼロを発売するなど、各社が新商品を続々とリリースする“ゼロ戦争”が発生。その結果、2007年以降の生産量は5年連続で拡大することとなった。

※カロリーゼロ……厚生労働省の栄養表示基準では、100ミリリットル当たり5キロカロリー未満であれば表示可能。

 カロリーゼロビールなどゼロ系飲料が氾濫する中、その当事者はどのような戦略を練っているのだろうか。日本コカ・コーラでコカ・コーラ ゼロのブランド戦略を担当する、コカ・コーラTMグループシニアマネジャーの助川公太さんに尋ねた。

1日3本はコカ・コーラ ゼロを飲んでいるという助川さん

コカ・コーラとダイエット コカ・コーラだけではとりきれない層があった

――まず2007年6月にコカ・コーラ ゼロが発売されるまでの経緯を教えてください。

コカ・コーラ ゼロ

助川 当時、コーラ分野ではコカ・コーラと、ゼロ系飲料ではダイエット コカ・コーラの2製品で対応していました。コカ・コーラは10代、ダイエット コカ・コーラは20〜30代の女性がメインターゲットです。

 しかし、味としてはオリジナルのコカ・コーラが好きでも、砂糖が気になって、10代から20代、30代と歳をとるにつれて、特に男性で「飲みたいんだけど、砂糖が入っているので飲む量を減らしたい」ということで飲まなくなっていることが分かりました。コカ・コーラとダイエット コカ・コーラだけではとりきれない層が顕在化してきたんですね。

 ダイエット コカ・コーラは20〜30代の女性にすっきりした味で評価されていたのですが、男性にとっては味に物足りなさがあるというのがあったので、コカ・コーラの味わいをそのままに、糖分をゼロにして、新たなターゲットを開拓しようということで導入を検討し始めました。

 私は2010年にコカ・コーラの部署に異動する前、お茶の部署にいたのですが、2004〜2006年にかけて無糖茶やゼロカロリーの飲料への興味が高まっているというトレンドがありました。ダイエット コカ・コーラに加えてもう1品、カロリーゼロの製品を出す土壌が十分でき上がっていたのも1つプラスに働いたと思っています。

 もし、その10年前にコカ・コーラ ゼロの導入を考えていたとしても、カロリーゼロの飲料カテゴリ自体が今ほど浸透していなかったと思います。そういう時代の追い風も含めて、健康志向でカロリーなどを気にする人が出てきた中で出せたと考えていますし、結果としてターゲットである20〜30代男性に評価されることができたということがあります。

――事前調査などはどのように行われたのですか。

助川 味やコンセプトの調査は、事前に行っていました。「コカ・コーラのおいしさをそのままにカロリーゼロ」というコンセプトを言うと、みんな期待してくれるのですが、その期待を裏切らない味を出さないと、「ダイエット コカ・コーラと何が違うのか」という話になってしまいます。味やコンセプトについては、米国のアトランタ本社のチームなどともディスカッションしながら非常に慎重に決めていったと聞いています。

――開発の流れはどのようなものでしたか。

助川 日本で導入するずっと前から海外で開発は行っていて、2005年に海外で導入されていました。日本では2006年に入ってから、コンセプトや味の受容性についての日本独自調査を行っていきました。

――そもそも海外で作られていたということですが、その経緯は。

助川 2005年に米国、2006年にオーストラリア、2007年に日本で導入という流れです。コンセプトとしては基本的に日本と一緒ですが、米国だと、肥満やダイエット、健康志向というこを気にする人がより多いということを受けて、コカ・コーラの味を糖分ゼロで楽しんでもらえるものを出そうということで、いち早く導入されていったと聞いています。

――最初は糖分ゼロで、2009年2月に保存料ゼロ、2010年2月に合成香料ゼロを増やしていきました。

助川 無駄なものや余計なもの、何か不安なものはとりたくないというトレンドが健康志向の中で出てきていましたし、ゼロというブランドのコンセプトにも合致していたので、味を損ねることなく、いろんなものをゼロにしていきました。一斉にできれば一番良かったのですが、味を損ねることなく、保存料も合成香料もゼロにしており、“ゼロ”の追求については今の時点でいったん完成していると考えています。

 何をゼロにできるかというのはマーケティング部門からの要求もありましたが、やはり研究開発部門と相談しながら決めていきました。

――助川さんはコカ・コーラ ゼロの担当になる前、コーヒーやお茶の部署にいたということですが、移ってきて違いは感じられましたか。

助川 やっぱり飲む時のモチベーションが違いますね。お茶やコーヒーはリラックスのための飲料だと思います。一方、炭酸はゼロをプラスに持ち上げるための飲料です。気分転換といっても、消費者が求めているものが違うので、そこを同じ考えでやると「全然それは求めていないよ」という感じになりますね。

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