コラム
» 2012年10月04日 08時01分 UPDATE

相場英雄の時事日想:家宅捜査にはワケがある――地味な記事の背後にあるモノ (1/3)

9月初旬、東京都庁に警視庁の捜査員が汚職事件の関連で家宅捜索に入った。メディアが大きく扱わなかったため、事件を知らない読者も多いはず。だが、この家宅捜索には重大な理由があるのだ。それは……。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『震える牛』(小学館)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 9月初旬、東京都庁に警視庁の捜査員が汚職事件の関連で家宅捜索に入った。新聞の社会面、あるいはテレビのニュースの扱いは必ずしも大きくなかったため、事件を知らない読者も多いはず。だが、この家宅捜索(ガサ)には重大な理由(ワケ)があるのだ。地味な記事の背後にある思惑を分析してみる。

1回当たり1万6000円でなぜ?

 先月、新聞記事を読んだ友人からこんなメールが届いた。

 「1回当たり1万6000円で逮捕されちゃうの?」

 事件とは、次の一件を指す。

 首都直下地震に備えるため、東京都水道局が民間企業に倉庫の建設工事を発注した。この際、建設会社が入札を担当する都の交通局係長を接待した。係長側は建設会社に対して入札情報を漏洩するなど便宜を図った。

 一連の行為が贈収賄容疑の対象となり、贈賄側と収賄側が同時に警視庁捜査二課に立件されたというのが大まかな構図だ。各種報道によれば、係長は都内の飲食店で計68回、計約110万円の接待を受けたという。

 メールを送った私の友人が反応したのはこの部分だ。110万円を68回で割った1回当たりの接待料金は単純平均で約1万6000円。この程度であれば、民間企業同士の間ではさほど多くない金額だ。

 入札情報を事前に漏らすのは明確な犯罪行為であり、金額の多寡が問題ではない。警視庁捜査二課が厳正に捜査した結果だ、そう考える読者も多いはず。

 ただ、捜査二課は警視庁内でも多忙を極めるセクションとして知られる。「担当分野である詐欺や横領、贈収賄でも金額や社会的インパクトの小さいネタはやらない」(関係筋)との事情もある。

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