私たちは世代間の不公平さをどう解決していくべきか藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年10月01日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 英エコノミスト誌最新号に面白い記事が載っている。タイトルは「Sponging Boomers」、要するに若い世代の負担でぬくぬくと暮らすベビーブーマーということだろうか。

 かくいう私もその世代の1人だ。日本の団塊の世代よりベビーブーマーの方が定義が広いが、大きな構造そのものはほぼどこの先進国でも同じだ(中国は、一人っ子政策を採用したおかげで、先進国の水準に届く前、2015年をピークに成長率にかげりが出る)。要するに我々の世代は、後の世代の負担で老後の生活を送る。だから「世代間闘争」というようなことが言われる。

 公正を期するために言うと、私たちの世代も同じように前の世代を支えてきたのである。年金にせよ、医療にせよ、ここまで制度が充実してきたのは、保険料や掛け金を払う人数が多かったからだ。つまり私たちだ。問題は、私たちの人口が極端に多かったこと、そして私たち以降の人口が減っていることにある。

 団塊の世代は、1年でだいたい260万人以上いる。今の若者はだいたい130万人ぐらいだろう。生まれてくる子どもたちは100万人ほどでしかない。この若者の人口で極端に多い人口を支えるということ自体がほとんど不可能だと思う。今、世界の先進国が国の負債の膨張に悩んでいる。ギリシャから始まった債務危機の焦点はいまスペインだ。米国も債務が増え続け、連邦政府の機能が一部停止するかどうかというところに再び来ている。その背景には、リタイアしたベビーブーマーや団塊の世代がいる。

 医療費を見てみる。2010年度の国民医療費は総額37兆円ほどだ。そのうち65歳以上の患者の医療費は17兆円弱、全体の55%を占める。そのうち9割がたは70歳以上の患者である。この時にはまだ団塊の世代は65歳に達していない。つまり、私たちが70歳になり始める5年後にはこの高齢者の医療費が急増することになる。

 医療費が増えてくるもう1つの理由は医療の進歩だ。昔なら亡くなっていたはずの患者が今では生き延びることが可能だ(延命治療という意味ではない。病を抱えたまま普通に生活する人々が増えているということである)。ガンや生活習慣病でもそういう患者が増えている。そうなれば医療費は必然的に膨らむ。これを減らすのは難しい、というより不可能だと言ってもいい。

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